概要
高分子レオロジーで扱われる評価項目の一つに、動的粘弾性があります。この測定では、試料に周期的なひずみ(正弦波)を与えたときに生じる、応力とひずみの値、および、その位相差(応力–ひずみ関係における周期の遅れ)を測定することで、貯蔵弾性率E’と損失弾性率E”、損失正接tanδ(=E”/E’)を求めます。装置は固体向けと溶融状態(液体)向けに大別されます。
固体粘弾性測定装置は、高分子フィルムやゴムシート等に広く利用されます。ガラス転移温度、架橋点間分子量【技術資料No.T1016】、および活性化エネルギー【技術資料No.T1109】が評価可能です。
装置
| 装置 |
株式会社ユービーエム製 Rheogel E4000 |
|---|---|
| 試験項目 | 温度依存性、周波数依存性等 |
| 治具 | 引張、圧縮、せん断等 |
| 温調範囲 | -150 ~ 400℃ |
| 周波数 | 0.1 ~ 1300Hz(正弦波) |
【図1】装置外観
分析事例
ガラス転移温度
ガラス転移温度(Tg)とは、高分子が硬いガラス状態から、軟らかいゴム状態に変わり始める温度のことです。Tgの測定は示差走査熱量計(DSC)による比熱変化から求める手法が一般的です。一方、動的粘弾性測定では損失正接tanδ(tanδ=E”/E’)または損失弾性率 E”のピークとしてTgを捉えることができ、材料の力学的応答に基づく転移挙動を把握可能です。
【図2】にPETの温度依存性(温度分散)測定の結果を示します。100~150℃付近にE”およびtanδのピークが観測され、この温度域でガラス転移が生じていることが推定されます。
【図2】貯蔵弾性率E’(△)、損失弾性率E”(□)、損失正接tanδ(●)の温度依存性
適用分野
高分子材料、プラスチック、ゴム
キーワード
粘弾性、温度依存性、ガラス転移温度