概要
高分子の性質を理解するために必要な知識についてシリーズで解説しています。
GPC(SEC)はサイズ排除クロマトグラフィーと呼ばれるように、高分子のサイズ(大きさ)と関係しています。本資料ではGPC(SEC)で測定されるサイズ(大きさ)がどのようなサイズであるかを示す一例を紹介します。
SECでは、高分子を球体とみなし、球の径が細孔の径に対して大きくなると侵入できなくなるために、サイズにより分別されるのだと説明されています。既に、「高分子の知識(4)高分子の大きさ(サイズ)の多様性」で示したように、実際の高分子鎖の形状は完全な球体ではなく、楕円体に近い形状です。話を簡単にするために、図1で示したような、円筒に置き換えてみます。このような円筒が孔を通過できるサイズについて考えることを通じて、サイズ分別の意味するところを示します。まず、円筒を直径Dの孔に近づけることを考えます。このときに上から見た様子を図2に示しています。
図2↑の方向から見た図を図3に示します。LがDより短い場合は孔を通過することができます(図3A)。一方、LがDより長い場合には、孔を通過しない場合と通過する場合があります(図3Bと図3C)。この場合、孔に対してある程度以上の角度があると孔を通過することができます。図3Cのような場合で、長さLの円筒が直径Dの孔を通過する条件を考えます。長さLの円筒と孔のある表面の角度がθとします。このとき、円筒の表面への投影長さLRは
(1)
となります。このLRがDより小さくなるとき、すなわち、
(2)
の条件を満たす場合に孔を通り抜けることができます。


式(2)の条件を満たす範囲は図4に示した赤く斜線を引いた領域です。円筒の長さが、孔の直径の10倍程度になっても、円筒が孔を通過できる可能性が高いことが理解できると思います。
すなわち、孔を通過したからといって、長さが孔の直径よりも必ず短いことを示すわけではないことが分かります。
長さLの円筒の投影長さLRの平均値LavRは次の式(3)で求めることができます。
(3)
ここで、LavRが孔径Dと等しい場合、すなわち、LavR = Dを満たす円筒は孔を通過することができます。その際の円筒長さは、式(3)から
(4)
となります。すなわち、孔径Dの細孔を通過した円筒の平均長さは1.57Dと推定できます。
GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)あるいはSEC(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)という手段は、このような効果を含めて高分子の大きさを分析しています。最近の理論解析では、サイズ排除クロマトグラフィーで測定している高分子の大きさは、ここで示したような大きさに近いものであるという報告がされています。
参考文献
この資料の執筆に当り次のような文献を参考にしました。
J.E.Puskas, E.A.Foreman, L.M.D.Santos, S.H.Soytas, Macromol. Symp., 261, 85 (2008)
Y.Wang, I.Teraoka, F.Y.Hansen, G.H.Peters, O.Hassager, Macromolecules, 44,403(2011)
高取 永一, 日本ゴム協会誌, 82, 515 (2009)
ゴム協会編集委員会, 日本ゴム協会誌, 84, 378 (2009)
R.J.Rubins, J.Mazur, PureAppl.Chem., 46, 143 (1976)
R.J.Rubin, G.H.Weiss, Macromolecules, 10, 332 (1977)
G.H.Weiss, R.J.Rubin, J.Stat.Phys, 14, 333 (1976)