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技術資料
No.T1838 | 2019.01.12

乾燥剤の細孔分布測定

概要

 食品などの乾燥剤として用いられるシリカゲルは、細孔を多数有する多孔質材料です。シリカゲルはA型とB型に大別され、それぞれ異なる吸湿特性をもっています。吸湿特性は多孔質構造に影響を受けるため、比表面積や細孔分布を解析することが重要となります。
 本技術資料では、吸湿性の異なるシリカゲルA型とB型の細孔分布を、2種類の手法(窒素吸着法と水銀圧入法)で比較した事例を紹介します。

窒素吸着法と水銀圧入法の違い

窒素吸着法

水銀圧入法

装置

BELSORP-mini II

(マイクロトラック・ベル(株)製)

Poremaster GT-60

(Quantachrome社製)

測定範囲

(細孔径)

0.4nm~2nm:マイクロポア解析

2nm~100nm:メソポア解析

※解析理論が異なる

4nm~950μm

前処理

真空下で加熱乾燥

真空下で乾燥

試料セル

1.8cm3(標準)

0.5cm3(小容量)

φ15mm×10mm又は20mm

得られる結果

比表面積、細孔分布、吸着特性

比表面積、細孔分布、空隙率

特徴

ナノレベルの細孔を評価

サンプル回収が可能

短時間で広範囲を測定可能

解析に仮定が少ない

注意点

解析理論に仮定が多い

サンプル回収ができない

高圧測定のため細孔がつぶれる可能性有

モデル図

(原理)

窒素吸着改

真空下で徐々に窒素ガスを導入し、表面に吸着させる。細孔径によって異なる窒素分圧で凝縮する。

(凝縮する分圧 細孔径:小<細孔径:大)

水銀ポロシ改

水銀は圧力をかけることで細孔内に侵入。

細孔径によって水銀を押込むのに必要な圧力が異なる。

(必要な圧力  細孔径:大<細孔径:小)

測定サンプル

シリカゲルA型 低湿度において湿気を吸着する力の強いもの
シリカゲルB型 高湿度において多量の湿気を吸い、吸着容量が大きいもの

図1改2
【図1】吸着等温線

測定結果

窒素吸着法

 試料の吸着等温線(吸着、脱着)を図1に示しました。A型は相対圧(p/p0)0.4までなだらかに立ち上がっていますが、B型は相対圧0.6~0.8で立ち上がっています。この結果から、A型はマイクロポア~メソポアを、B型はメソポアを持っていることがわかります。
 吸着等温線の吸着側の結果を用いて、細孔分布を解析しました(図2,3)。マイクロポアの解析ではA型で1.2nmピークがみられ、メソポアの解析では、A型は分布の一部が、B型は7nmにピークを持つ分布が得られました。(解析理論が異なっているため、グラフは重ならない)。この細孔分布の違いが、シリカゲルの吸湿性に影響を与えていると考えられます。

図2改2
【図2】 細孔分布(マイクロポア)     【図3】 細孔分布(メソポア)

水銀圧入法

 水銀圧入法による細孔分布の解析結果(図4)から、100nm以上には分布が無いことがわかります。100nm以下を拡大すると、窒素吸着法と同様に、A型はピークの裾が検出され、B型は10nm付近にピークを持つ分布であることが確認されました。窒素吸着法の結果と比較すると、サンプルによらず、細孔分布が広く、大きめに観測される傾向がありました。

図3改2
【図4】水銀圧入法による細孔分布結果

 以上の結果から、A型は小さい細孔を有するため、低圧(低湿度)での吸着が可能であり、B型は大きい細孔を有するため、吸着容量が大きいと推察できます。このような細孔分布の測定から、構造と吸着特性の関係を把握することが出来ました。
 弊社では測定の目的(ナノオーダーの分布を見たい、広い範囲で測定したい、など)に応じて、これらの手法を使い分けることが可能です。

適用分野
プラスチック・ゴム、セラミックス・ゼオライト、その他無機製品
キーワード
シリカゲル 多孔質材料 セパレータ 比表面積 粉末

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