概要
前処理不要かつ迅速分析が可能なDART-MSは、試料に含有される成分を短時間で解析したい場面において有効です。本技術資料では、DART-MS を用いた市販樹脂製品中の添加剤解析について紹介します。
(DART-MSに関しては技術レポートNo. A1505参照)
試料
1) チャック付ポリ袋(ポリエチレン製)
2) クリアファイル(ポリプロピレン製)
3) 結束バンド(ナイロン製)
4) ポーチ(ポリ塩化ビニル製)
【図1】試料の外観
分析装置
| ・MS | ブルカー・ダルトニクス microTOF (飛行時間型質量分析計) |
| ・測定質量範囲 | m/z 50-1000 |
| ・イオン源 | DART-OS (IonSense製) |
| ・測定モード | ポジティブモード |
| ・イオン源温度 | 100、200、300℃ ※室温から500℃まで設定可能 |
分析方法
試料を分析可能な大きさに裁断後、DART-MSイオン源にかざし、測定しました。
結果
1)チャック付ポリ袋(ポリエチレン製)
100 ℃(イオン源温度)におけるDART-MSスペクトルを図2に示します。高級脂肪酸アミド(滑剤)と推定される成分が検出されました。
【図2】チャック付ポリ袋(ポリエチレン製)のDART-MSスペクト
2)クリアファイル(ポリプロピレン製)
300 ℃(イオン源温度)におけるDART-MSスペクトルを図3に示します。イルガホス168(酸化防止剤)や高級脂肪酸アミド(滑剤)と推定される成分が検出されました。
【図3】クリアファイル(ポリプロピレン製)のDART-MSスペクトル
3)結束バンド(ナイロン製)
100 ℃(イオン源温度)におけるDART-MSスペクトルを図4に示します。O–アセチルクエン酸トリブチル(可塑剤)と推定される成分が主に検出されました。
【図4】結束バンド(ナイロン製)のDART-MSスペクトル
4)ポーチ(ポリ塩化ビニル製)
200 ℃(イオン源温度)におけるDART-MSスペクトルを図5に示します。フタル酸ビス(2-エチルヘキシル) (可塑剤)と推定される成分が検出されました。
【図5】ポーチ(ポリ塩化ビニル製)のDART-MSスペクトル
まとめ
本技術資料では、DART-MSを用いて市販樹脂製品中に含まれる添加剤の解析を行いました。イオン源の温度は添加剤の種類に応じて室温から500 ℃まで変えられ、任意の温度で測定が可能です。
得られた結果から、DART-MSは各種樹脂製品に含まれる添加剤を迅速かつ簡便に把握できる有効な分析手法であることが示されました。