概要
TD-NMR (Time Domain NMR、パルスNMR) を導入しました。材料の分子運動性を観測することが可能です。ポリマーの高次構造や架橋度の解析、分散溶液の分散性評価などを行うことができます。
装置
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 装置  | 
 ブルカージャパン製 Minispec mq20  | 
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 共鳴周波数  | 
 20MHz  | 
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 観測対象  | 
 1H核, 19F核  | 
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 温度範囲  | 
 -100~200℃  | 
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 試料形態  | 
 固体、液体  | 
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 T1測定モード  | 
 インバージョン・リカバリー サチュレーション・リカバリー  | 
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 T2測定モード  | 
 CPMG ハーンエコー ソリッドエコー  | 
        		            【図1】装置外観
 TD-NMRはパルスNMRとも呼ばれ、1H核や19F核を検出し、材料の分子運動性を非破壊で観測することが可能です。-100℃から200℃までの温度可変測定に対応しています。
 さらに、測定時間が短いことから、熱硬化樹脂等の硬化挙動をin-situで追跡することも可能です。
試料は10mmφ試料管に入るものであれば、液体・固体等無機物を含有していてもその形状を問いません。
分析事例
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)の解析
 ソリッドエコー法とCPMG法のデータを結合し系全体の状態を反映したNMR信号からTPUの高次構造解析を行った事例を紹介します。
 TPUのパルスNMR測定より得られた減衰曲線の波形分離解析を行った結果、緩和時間の異なる3つの成分が確認されました【図2】。【表2】に各成分の比率および緩和時間を示します。運動性が非常に低い成分が存在することが分かります。
 TPUはウレタン結合を有するハードセグメントとソフトセグメントからなるブロック共重合体です。ハードセグメント中のウレタン基は分子間相互作用により、強固な物理架橋構造や結晶相を形成していると言われています。
 運動性が低い成分はハードセグメント中のウレタン基同士が形成する結晶相と思われます。
 このようにパルスNMR測定を応用することで系全体の詳細な高次構造の推定が可能です。

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 成分  | 
 比率 / %  | 
 T 2 / µsec  | 
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 運動性低  | 
 8.1  | 
 15.6  | 
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 運動性中  | 
 36.1  | 
 415  | 
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 運動性高  | 
 55.8  | 
 6,140  | 
アプリケーション
紹介した分析事例以外にもTD-NMRによる分子運動性評価から、次に示すような解析が可能です。
| ・架橋領域と非架橋領域 | ゴム材料の架橋反応、熱硬化樹脂の硬化反応のin-situ解析 硬化条件の違いによる熱硬化性樹脂の硬化度比較  | 
| ・高次構造の解析 | 結晶状態の比較、ブロックポリマー、ブレンドポリマーの相構造 | 
| ・温度特性の評価 | 結晶、非晶比率の温度依存性、溶融状態の分子鎖運動性 | 
| ・液体の挙動・状態 | 粒子分散溶液の粒子分散性評価 |