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装置紹介
No.A2203 | 2022.09.08

TD-NMR

概要

 TD-NMR (Time Domain NMR、パルスNMR) を導入しました。材料の分子運動性を観測することが可能です。ポリマーの高次構造や架橋度の解析、分散溶液の分散性評価などを行うことができます。

装置

【表1】TD-NMR装置仕様・性能

装置

ブルカージャパン製

Minispec mq20

共鳴周波数

20MHz

観測対象

1H核, 19F核

温度範囲

-100~200℃

試料形態

固体、液体

測定モード

インバージョン・リカバリー

サチュレーション・リカバリー

2測定モード

CPMG

ハーンエコー

ソリッドエコー

 

【図1】装置外観

 TD-NMRはパルスNMRとも呼ばれ、1H核や19F核を検出し、材料の分子運動性を非破壊で観測することが可能です。-100℃から200℃までの温度可変測定に対応しています。
 さらに、測定時間が短いことから、熱硬化樹脂等の硬化挙動をin-situで追跡することも可能です。
試料は10mmφ試料管に入るものであれば、液体・固体等無機物を含有していてもその形状を問いません。

分析事例

熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)の解析

 ソリッドエコー法とCPMG法のデータを結合し系全体の状態を反映したNMR信号からTPUの高次構造解析を行った事例を紹介します。
 TPUのパルスNMR測定より得られた減衰曲線の波形分離解析を行った結果、緩和時間の異なる3つの成分が確認されました【図2】。【表2】に各成分の比率および緩和時間を示します。運動性が非常に低い成分が存在することが分かります。
 TPUはウレタン結合を有するハードセグメントとソフトセグメントからなるブロック共重合体です。ハードセグメント中のウレタン基は分子間相互作用により、強固な物理架橋構造や結晶相を形成していると言われています。
 運動性が低い成分はハードセグメント中のウレタン基同士が形成する結晶相と思われます。
 このようにパルスNMR測定を応用することで系全体の詳細な高次構造の推定が可能です。

【図2】 TPUのパルスNMR測定(60℃)

 

【表2】各成分の比率および緩和時間

成分

比率 / %

T 2 / µsec

運動性低

8.1

15.6

運動性中

36.1

415

運動性高

55.8

6,140

アプリケーション

 紹介した分析事例以外にもTD-NMRによる分子運動性評価から、次に示すような解析が可能です。

・架橋領域と非架橋領域 ゴム材料の架橋反応、熱硬化樹脂の硬化反応のin-situ解析
硬化条件の違いによる熱硬化性樹脂の硬化度比較
・高次構造の解析 結晶状態の比較、ブロックポリマー、ブレンドポリマーの相構造
・温度特性の評価 結晶、非晶比率の温度依存性、溶融状態の分子鎖運動性
・液体の挙動・状態 粒子分散溶液の粒子分散性評価

 

適用分野
プラスチック、加硫ゴム、熱可塑性ゴム、ブロックポリマー、ブレンドポリマー、ポリウレタン材料
キーワード
パルスNMR、分子運動性、緩和時間、高次構造解析、架橋構造解析、硬化反応のin-situ解析

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