概要
化学反応・物理変化に伴って出入する熱量を測定することができる、反応熱量計を導入しました。反応熱量計では、撹拌や混合、触媒添加など反応操作中の熱量測定を行えます。
主なスペック
温度範囲 | 室温~200℃ |
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耐圧 | ~1MPa |
容量 | 400ml~1L |
対応ガス |
N2、CO2 上記以外は御相談ください。 |
試薬滴下 |
滴下速度 ~700ml/hr. 最小滴下量 200µL |
撹拌翼 | ピッチブレード、アンカー |
得られる情報
比熱、反応熱量、顕熱、エンタルピー、最大発熱速度、未反応物の蓄積量、断熱温度上昇値
原理
反応熱量計には各種測定方式があり、ここでは弊社導入装置で測定可能なヒートフロー方式について説明します。ヒートフロー方式は、ジャケットオイルを温調することで内温(サンプル温度)(Tr)または外温(Tj)を制御します。見かけの反応熱は、熱伝達流体(ジャケットオイル)からサンプルが得る熱or失う熱(qflow)を測定することで得られます。qflowの他に試薬添加による持ち込まれる熱(qdos)、温度の増減により蓄積される熱(qaccu)、リアクタの蓋から放熱される熱(qloss)を考慮して、正確な反応熱(qr)は以下の式から算出されます。
qr=qflow+qaccu+qdos+qloss
・qflow:リアクタの壁での熱流
qflow=U・A・(Tr-Tj)
・qaccu:温度変化に伴い発生する顕熱
qaccu=dTr/dt・(mr・cpr+mi・cpi)
・qdos:試薬添加による持ち込み熱
qdos=dmdos/dt・cpdos・(Tr-Tdos)
・qloss:リアクタの蓋などで行われる熱交換
qloss=α ・(Tr-Troom)
(U:総括伝熱係数、A:伝熱面積、T:温度、m:質量、cp:比熱、α :熱交換係数)
分析事例
反応熱量計では、最大発熱速度からプロセスに必要な冷却能力の決定、反応試薬の投入速度の検討を行うことが可能であり、プラント設計に必要なデータを取得することが可能です。反応熱量や断熱温度上昇値からは、プラントの冷却能力喪失時に熱暴走温度に達しないかなど、プラントの安全性評価が行えます。
・アミン水溶液のCO2ガス吸収熱の測定
アミン水溶液にCO2ガスをバブリングさせて、反応熱[W]をモニタリングして発熱が観測できなくなるまで測定を実施しました。
測定結果
反応前後の比熱:反応前 3.7 J/(g・K)
反応後 3.8 J/(g・K)
反応熱量 :110 kJ
エンタルピー :約75 kJ/CO2mol
最大発熱速度 :15 W
断熱温度上昇値:63 K
・中和反応熱の測定
酢酸 0.5NにNaOH 2Nを滴下して、反応熱[W]をモニタリングして発熱が観測できなくなるまで測定を実施しました。
測定結果
反応前後の比熱:反応前 4.0 J/(g・K)
反応後 3.9 J/(g・K)
反応熱量 :15 kJ
エンタルピー :約60 kJ/mol
最大発熱速度 :16 W
断熱温度上昇値:5.9 K