概要
架橋や橋架け技術は生体高分子や食品に代表されるゲルや電子材料に用いられるエポキシ樹脂、汎用プラスチックの改質といった分野でよく用いられています。
これらの分野では架橋の程度が製品物性に強い影響を与えるため、架橋密度などを評価する必要がありますが、その評価手法はあまり多くありません。それは、架橋してしまうため溶媒に不溶となる場合が多く、プラスチックの代表的なキャラクタライズ手法であるSECやNMRといった手法が適用困難になるからです。
固体粘弾性測定は、架橋密度を評価できる数少ない評価法の一つです。架橋の程度が低すぎると評価できない欠点はありますが、比較的簡単に評価することができ、ロット間の比較などに用いることが出来ます。
分析事例の紹介
古典ゴム論によると架橋ゴムの弾性率は式(1)のように表されます。
(1)
ここで、Mc:架橋点間分子量(g/mol)、μ:ポアソン比(0.5と仮定)、ρ:密度(g/m3)、R :気体定数(8.314 J/K/mol)、T:絶対温度(K)、E:弾性率(Pa)です。
図1に市販プラスチックの測定事例を示しました。測定温度の上昇に伴って融解し、弾性率が低下しています。しかし、途中から弾性率が増加に転じています。この領域を式1に基づいて解析することによって架橋点間分子量を評価することが出来ます。
図中に式1の計算結果を実線で示しました。計算結果は測定結果と良く一致し、式1が適用できることが分かります。得られた架橋点間分子量は絡み合い点間分子量の数倍程度で緩やかな架橋がかかっていることが分かりました。
このように、固体粘弾性測定を用いることで架橋点間分子量を評価することが出来ます。また、ガラス転移温度の評価なども合わせて行うことが可能です。
適用分野
プラスチックス・ゴム、フラットパネルディスプレイ、食品包装材
キーワード
ポリエステル、フィルム、光学フィルム、シュリンクフィルム