概要
接触角測定は液体を用いた簡便な固体表面評価法です。濡れ性を評価できるほか、固体表面の均一性の評価などに利用できます。この場合、接触角とは静的な測定で得られる値となります。
一方、動的な測定(前進角、後退角など)を行うと、静的な測定とは異なった情報を得ることができます。
本技術資料では、固体表面における液滴の転落性に関して、動的接触角測定および固体表面構造の観点から評価した事例をご紹介します。
分析事例の紹介
動的接触角測定の模式図を図1に示します。液滴が大きくなるときの接触角を前進角、液滴が小さくなるときの接触角を後退角と呼びます。ここでは前進角と後退角の差を動的測定の指標(ヒステリシス)としました。転落性の指標は、一定量の液滴(約10μL)が転落し始める角度(転落角)としました。表面構造の解析にはSPMを用いました。
PMMAを熱プレスして得たシートを試料として用いました。成形条件は同一ですが、プレス時にPMMAと接する材料に異なるものを用い、異なる表面を作成しました(それぞれ、PMMA-A、PMMA-Bと記す。)。
得られた接触角、転落角、ヒステリシス(前進角-後退角)を表1に示しました。いずれも同一の素材(PMMA)なので、接触角は誤差の範囲内で同一の値を示しました。しかし、転落角、ヒステリシスは異なり、PMMA-Aは液滴が転落しにくく、ヒステリシスが大きくなりました。このように、同じ素材でありながら表面の作り方を変えると、液滴の動きやすさは著しく変化しました。この理由を探るため、表面構造を観察したところ、PMMA-Aの表面には10μmオーダーの凹凸構造があることが分りました。
この評価のように、同一材料でも表面状態の違いにより、動的接触角に大きな差があることが分りました。
適用分野
プラスチックス・ゴム、フラットパネルディスプレイ、電池・半導体材料
キーワード
ポリエステル、フィルム、光学フィルム、シュリンクフィルム