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技術資料
No.T1114 | 2011.11.11

プラスチックへの気体透過の現象論の解説Ⅲ

気体透過係数の現象論

概要

シリーズで気体透過性(ガス透過性)について解説しています。第三回目の本資料では、気体透過係数について初歩的な説明を示します。

透過係数の求め方には、透過実験を行う方法と吸収実験を行う方法があります。
透過実験について、図1に示します。最初に、固体膜を介して二つのタンクを連結します。両方のタンクを真空にした後、上流側のタンクに時刻=0において圧力p1の気体を瞬時に導入します。下流側のタンクの圧力p2を測定します。時刻に対して、圧力p2をプロットした模式図を図2に示しました。時刻=0では膜中の気体の濃度は0です。1では、膜中の気体分子の濃度勾配が一定となって、圧力p2の時間に対する勾配が一定になります。そのときの勾配から透過係数を求めることができます。(なお、圧力p2p1と比較して、0とみなせるように、下流のタンクの体積を上流のタンクに対して十分大きくしておく必要があります。)



図1 気体透過実験の模式図


図2 気体透過実験のデータの模式図

 

下流タンクの圧力2の時間に対する勾配が一定になった状態(1)で、一定時間ごとの透過量Qの変化量を、膜の表面積をAとすると透過係数P

の関係から求めることができます。
透過量が多く、圧力p2が0とみなせない場合は、一定時間Δごとに下流タンク2から圧力p2(Δ)の気体を排出し、p2=0とする必要があります。そしてp2(Δ)/Δが一定になったときに、この値から圧力の時間に対する勾配として、透過係数を計算するなどの工夫が必要になります。

吸収法は、厚みXの固体膜をある一定圧力の気体に暴露し、固体膜に吸収されている低分子の重量Mの変化を時間の関数として観測する方法です。固体膜の重量は気体が固体膜中をフィック型拡散により吸収される場合、時間tの0.5乗に依存して増加します。その後、一定値Mに漸近します。フィック型拡散については、解析的な解が得られており、M/M=0.5になるときの時間から拡散係数D、平衡吸収量Mから溶解度係数を求めることができます。両者の積から透過係数Pを求めることができます。吸収法の実験によりえられるデータの模式図は図2に示しました。


図2 吸収実験の結果の模式図

【参考文献】
“Permeability of Polymer/Clay Nanocomposites : A Review”: G.Choudalakis, A.D.Gotsis, Eur.Polym.J., 45, 967 (2009)

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