概要
X線回折計は物質の結晶構造を調べることに使用される装置です。X線回折計に試料を加熱する高温炉を設置して高温下で測定する手法は高温X線回折と呼ばれています。この手法を用いると、結晶構造の相転移、物質の融解、熱膨張などを詳細に測定できます。
分析方法
①石英の高温相転移
水晶とも呼ばれる石英(α-SiO2)は加熱すると結晶構造が変化して高温相であるβ-SiO2に相転移することが知られています。
この相変化を調べるため、550℃から600℃まで5℃毎にXRD測定しました。
570℃で回折線位置が大きく低角度に移動し、高温相であるβ-SiO2への変化(文献値573℃)が確認されました。
更に、550℃から565℃まで回折線は若干低角度に移動しており、相転移以前に結晶構造が変化し始めていることが確認できました。
②Agの融点
Agの融点(文献値962℃)を950℃から970℃まで2℃毎に温度を保持して測定しました。
962℃でAgの回折線は消滅し、代わりに試料皿のアルミナ(α-Al2O3)の回折線が出現しました。
これはAgが融解し、表面張力で水滴のように丸まることで、試料面積が小さくなったことによるものです。
融点である962℃では低角度に移動したAgの回折線が僅かに確認され、部分的に周期構造が残っているものと思われます。
弊社では高感度な半導体検出器と温度ムラの少ない間接加熱方式の高温炉を使用しており、短時間で精度の良い高温X線回折結果が得られます。
また、試料台が水平で溶融等で試料が変形しても保持できるため、融点の測定も可能です。
最高温度は1200℃で、雰囲気ガスは大気、N2、Heなどの各種ガスや真空でのin situ測定に対応しています。試料は、粉末だけではなく、セラミックス、金属板など固体も測定可能です。
適用分野
セラミックス・ゼオライト、その他無機製品、電池・半導体材料
キーワード
石英、SiO2、Ag、セラミックス、金属板