概要
一般的に、高分子製品には異方性があり、評価する方向によっては異なる結果を示すことが多々あります。本技術資料ではガス透過試験装置Deltaparm®を用い、食品包装用フィルム(菓子袋)の水蒸気透過性が異方性を示す例を紹介します。
内容
Deltaparm®(図1)は、バリア性の高いフィルムのガス透過・水蒸気透過を評価できる装置です。容易に試験条件を変更できるという特徴を生かし、菓子袋の水蒸気透過性が相対湿度に対して変化する様子を調べました。
評価結果を図2に示しました。水蒸気の透過方向は外から内、と内から外の二方向があります。
今回、調べてみると、水蒸気の透過性は外から内へ透過する方が、内から外へ透過する方よりも大きいことが分かりました。また、この違いは、相対湿度が高いほど顕著になることも分かりました。
このように透過方向によって評価結果が変わったのは、フィルムが、外がポリアミド(PA)、内がポリエチレン(PE)から構成される積層体であるためだと考えられます。
PAは吸湿性があるため、高湿度に晒されると、吸湿して性質が変化すると予想されます。外から内へ水蒸気を透過させると、PAが高湿度側にきます。すると、PAの性状が変化し、水蒸気透過試験の結果に影響を与えたと考えられます。
今回のケースでは極端な結果が得られましたが、同様のケースは他にもあると予想されます。
実際の評価では、製品がどの様な目的で使用されるのか、勘案したうえで、測定する方向を決定する事が必要です。
適用分野
ガス透過、水蒸気透過、バリア性評価
キーワード
プラスチック、フィルム、積層体