概要
Mn系酸化物は、リチウムイオン電池(LIB)の正極材として使用されます。Mn価数は電池性能に影響を与えるため、材料毎の価数差異や充放電前後の価数変化を把握することは重要です。
X線光電子分光分析装置(ESCAまたはXPS)は、金属価数解析に有用な分析手法です。市販のマンガン酸リチウムを用いて、Mn価数を解析した事例を紹介します。
分析事例の紹介
<マンガン酸リチウム(LiMn2O4)のESCA分析>
通常の金属価数解析はメインピーク位置より行いますが、Mnのメインピーク(Mn2p)はMn2+~Mn4+が重複するため評価困難です。【図1】
一方、Mnはスピン相互作用によりMn3sピークが分裂します。スピン相互作用はMn価数に関係するため、ピーク分裂幅を解析することでMn価数を評価できます。【図2】
Mn3sピーク分裂幅より算出したMn価数は3.6となり、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)の理論値3.5と良く整合しました。
同手法により、材料毎のMn価数を解析できます。さらに、大気非曝露分析【No.T1722】を組み合わせて充放電前後のMn価数変化が評価可能です。
適用分野
電池・半導体材料、フラットパネルディスプレイ、その他無機製品、その他有機製品
キーワード
リチウムイオン電池、正極材、Mn、マンガン、ESCA、XPS、スピン相互作用、交換分裂