概要
製品外観は品質管理の上で重要項目の一つである。樹脂(プラスチック)の多くは加熱等により溶融し、様々な方法で流動させて形づくる(成形)。金型等に閉じ込めて冷却固化して成形するものの他、流動時の表面がそのまま製品外観に直結する成形法も少なくない。
このような成形法に適する原材料を見分ける一つの方法として、キャピラリーレオメーターによる流動性評価が有用である。本技術資料では、滑り流動について紹介する。
分析事例の紹介
キャピラリーレオメーターは、細管(ダイ)中で樹脂がせん断流動していることを前提として、式(1)、(2)により、せん断応力とせん断速度を算出する。 (ほかにも、仮定もあるが、ここでは触れない。)
せん断速度=32Q/πD3 式(1)
せん断応力=ΔP・D/(4L) 式(2)
Q:流量、D:ダイ直径、L:ダイ長さ、ΔP:圧力
流動状態が理想的な状態の場合、ダイの大きさを変えても式(1)、(2)で評価した流動曲線は変化しない。
しかし、流動が理想的な状態でない場合、例えば壁面滑りが起きていると、異なるダイで評価した結果は互いに一致しない。
その事例として高密度ポリエチレンの測定例を図2に示す。この評価結果を用い、壁面での滑りの程度を見積もり、滑り速度比としてまとめ、図3に示した。
図3より、添加剤を加えると、滑り速度比が大きくなり、壁面滑りが起きやすい事が分かる。滑りと外観の関係を探るため、ストランド表面をレーザー顕微鏡で評価した(図3右側)。その結果、滑りやすい、添加剤がある場合の方が表面粗さ(Ra)が小さく、平滑になり、滑り流動と外観に関係がある事が示唆された。
このように滑りの程度は、押出物外観と関係し、外観不良原因を探る上でも有用な手段といえる。
適用分野
成形加工
キーワード
樹脂、外観、流動、滑り