概要
核磁気共鳴(NMR)法は試料の形態を問わずミクロな構造情報を得ることができる測定法で、ガラスのような非晶質についても固体NMRにより核種毎の局所構造解析が可能です。
ガラスの構成成分としてB、Na、Al等がありますが、これらは全て四極子核(スピン結合定数I>1/2の核種)と呼ばれています。固体NMRで四極子核を測定する際には、核スピンとその周りの電場勾配との相互作用(四極子相互作用)がピークの広幅化を招き、しばしば解析を困難にします。しかし、高磁場NMRによって広幅化を低減させることで、高分解能なスペクトルが取得可能となります。
本技術資料では、固体NMRを用いた無機材料解析事例として、ガラス中の四極子核の配位解析事例をご紹介します。
分析事例の紹介
磁場強度の異なるNMR(400MHz、700MHz)を用いて、ガラス中のホウ素及びアルミの固体NMR測定を行いました【図1、2】。
ガラス中のホウ素及びアルミは複数の配位構造を取りますが、400MHzでは分解能が悪く、ピークの重複が見られました。一方で700MHz NMRでは、四極子相互作用の低減により11B、27Al共にピークが先鋭化し、分解能が向上しました。これにより波形処理が可能となり、配位比率の算出が可能となりました。
このように、高磁場NMRにより高分解能な四極子核のNMRスペクトルが取得できます。また、ガラス以外の材料の四極子核についても高分解能化が可能です。
適用分野
無機材料(ガラス等)
キーワード
高磁場NMR、固体NMR、四極子核、組成分析