概要
2種類以上のポリマーを混ぜ合わせるポリマーブレンドの技術は高分子材料の改質手法として広く利用されている。ポリマーブレンドでは、ポリマー同士が混ざり合うことの方が珍しく、多くの場合、海島構造に代表される相分離構造を形成する。ポリマーブレンドの材料特性は相分離構造と密接に関係していることから、相分離構造の解析はポリマーブレンド開発における鍵となる。本技術資料では、ポリスチレン(PS)とポリビニルメチルエーテル(PVME)のブレンドポリマーが相分離する様子を、加熱ステージを搭載した溶融顕微鏡を用いて観察した。
試料
PS/PVME(30/70)ブレンドポリマー
室温では相溶、高温では相分離する特徴を持つポリマーブレンド
分析手法
溶融顕微鏡 【図1】: ECLIPSE LV100NPOL(Nikon製)
加熱試料ホルダー : 顕微鏡用大型試料加熱ステージ Linkam(ジャパンハイテック株式会社製)
観 察 条 件 : 試料を140℃で保持し、相分離構造の継時変化を観察
結果
ガラス基板上に製膜したPS/PVMEブレンドを140℃で保持し、相分離構造の形成過程を光学顕微鏡で観察した【図2a-d】。加熱直後の試料【図2a】ではPSとPVMEが完全に相溶しているが、140℃で5分加熱すると、PVMEとPSの相分離(濃度ゆらぎ)に伴う、コントラストの変化【図2b】が観察できた。その後、相分離構造は加熱時間と共に成長【図2c】し、最終的にミクロンオーダーのドメインを持つ海島構造【図2d】を形成した。
更に溶融顕微鏡観察結果に対し画像解析(フーリエ変換(FFT))を行うことで、ドメイン間距離の時間変化を解析することが可能である【図3】。
まとめ
溶融顕微鏡を用いることで、ブレンドポリマーの相分離過程をIn-situで観察することが出来た。弊社では、溶融顕微鏡だけではなく、走査型電子顕微鏡(SEM)や走査型電子顕微鏡(AFM)などの顕微鏡を使い分けてブレンドポリマーの相分離構造観察を実施している。