概要
食品や電子部品の包装材や電子材用樹脂基板は、ガスバリア性、電気特性、光学特性、耐薬品性などの様々な特性が必要とされます。これらの特性は、単一な樹脂では満たす事が出来ないため、必要とされる特性に合わせ、多数の樹脂を積層した包装材や基板が用いられます。即ち、その積層構造および各層の樹脂組成(層構成)は、特性発現のために重要な役割を担っていることになります。
本技術資料では、樹脂の層構成を分析する際に必要となる断面を作成した事例として、作成した断面の光学顕微鏡写真をご紹介します。
断面調整方法
断面作成には様々な手法がありますが、基本的には、1.サンプリング、2.前処理、3.断面調整、の手順で行います。サンプリングでは、試料をナイフ等により断面調整に適した大きさにします。その後、必要に応じて包埋などの前処理を施します。最後に前処理後の検体を装置によって断面調整します。
弊社には、断面調整の装置として、研磨、ミクロトーム、断面イオンミリングを保有しています(ミクロトーム、断面イオンミリングはクライオ機能あり)。
観察事例
ミクロトームで調整したモバイル表示部の断面光学顕微鏡写真を紹介します。
図1は、モバイルAの表示部の断面構造を観察した事例です。約200μm厚み(0.2㎜)の層の中に①~⑦の合計7層が確認されました。
図2は、図1とは異なるモバイルBの表示部の断面構造です。こちらは約560μm厚みの層の中に①~⑪の合計11層が確認され、モバイルAとは異なる構造になっていることが分かりました。
調整した断面を分析することで、層構成を明らかにすることが可能です(例【技術資料T1836】多層材料の積層構成分析(イメージングFT-IR))。
まとめ
適切な手法をもちいることで、積層フィルムや基板の断面を作成し、層構成を明らかにすることが可能です。また、同様の手法で、層中に埋もれた欠陥や異物を分析する事が出来ます。