概要
モリブデン(Mo)含有潤滑油は自動車エンジンオイルの代表的な摩擦低減剤で、摩擦面に形成される膜成分(潤滑膜)が低摩擦化に寄与します。電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)により潤滑膜の元素分布を解析した事例を紹介します。
試料
以下の通り調製した潤滑膜の分析を実施しました。
Mo系摩擦低減剤を含む市販エンジンオイルを金属基板上に塗布
→摩擦試験(表面温度50℃,試験時間180min)【図1】
事例紹介
EPMA元素マッピングにより、摩擦面内における潤滑膜の元素分布を可視化できます【図2】。Mo, S, Oの元素マッピングより、低摩擦化に寄与する二硫化モリブデン(MoS2)1~3)は摩擦面に偏析、酸化モリブデンはMoS2と比べて全体に分布していると考えられます。また、Zn、P、Ca(添加剤由来)のうちZn及びP分布はSと同傾向でMoS2形成に関与する可能性が推定されます4~5)。
引用文献
- 1)駒場ら:MoDTC添加油の潤滑効果に対する温度の影響,トライボロジスト,62,11 (2017) 35.
- 2)山田ら:MoDTCの摩擦低減機構,日石三菱レビュー,43,1 (2001) 5.
- 3)高木:MoS2族の層状構造と摩擦,精密機械,46,11 (1980) 1434.
- 4)MI De Barros Bouchet et al.:Mechanisms of MoS2 formation by MoDTC in presence of ZnDTP effect of oxidative degradation,Wear,258,11-12 (2005) 1643.
- 5)大津ら:MoP・ZnDTP 併用条件における境界潤滑特性とその潤滑機構に関する研究,トライボロジスト,63,10 (2018) 715.
適用分野
その他無機製品
キーワード
潤滑油、潤滑膜、モリブデン、Mo、摩擦低減剤、低摩擦化、EPMA、元素分布、面内分布