概要
リバースエンジニアリングにおいて電子顕微鏡による形態観察や元素分析は有用な手法です。市販スマートフォンを一例に、カメラ部分を断面加工してCMOSセンサーの微細構造を解析した事例を紹介します。
分析方法・分析装置
装置:電界放出型走査電子顕微鏡/エネルギー分散型スペクトロメータ(FE-SEM/EDS)
試料
市販スマートフォンのカメラ部分(赤点線部)を切断・研磨およびArイオンミリングを用いて断面作製し、CMOSセンサー部分(図1黄枠)を分析しました。
結果及び考察
CMOSセンサー(図1黄枠)について、SEMによる形態観察、EDSによる元素分布解析を行いました。
SEM像でマイクロレンズ、カラーフィルター、フォトダイオードが可視化され、カラーフィルター直下にフォトダイオードがあるため裏面照射型のCMOSセンサーと判別できました(図2)。
図3にEDS元素マッピングを示します。マイクロレンズでC, N, Oの存在が確認されました。同様に、カラーフィルターでAl, Cl, N、フォトダイオードでSiの存在が分かります。カラーフィルターに着目すると、AlとClは交互に分布しており、CMOSセンサーが異なるカラーフィルターで構成されることが明らかとなりました。
まとめ
材料断面の電子顕微鏡観察は内部構造や構成元素を把握できるため、リバースエンジニアリングにおいて有用な手法となります。今回は、断面SEM/EDSにより市販スマートフォンのCMOSセンサー構造および元素分布を解析しました。
当社では様々な材料の断面作製技術を有しており、それらの電子顕微鏡観察が可能です【技術レポートNo. T1121,T1511,T1724,T1830,T2013など】。その他の分析手法(X線光電子分光法など)とあわせて、材料性能に寄与する構造因子を解析できます。