概要
大気下で変質・構造変化し易い材料(電池材料や触媒材料など)は前処理から分析までの全工程を大気非暴露下で行う必要があります。今回、大気暴露で酸化しやすいAg-Ba-Sn合金を対象に、大気非暴露FIB-TEMにより酸化を抑制して解析した事例をご紹介します。
分析方法
① 大気非暴露下でFIB(集束イオンビーム)加工により薄片試料を作製しTEM観察
② ①後に10min大気暴露させて同一箇所をTEM観察
試料
Ag-Ba-Sn合金
結果
1)形態観察・結晶構造解析
TEM像および制限視野電子回折図形を図1に示します。
TEM像より大気暴露前後で形態変化が認められました。電子回折図形を取得したところ、大気非暴露下では単結晶由来の規則正しく並んだ回折スポットが得られたのに対し、大気暴露後では多結晶(微結晶)由来の多数の回折スポットが得られました。
上記結果より、大気暴露により結晶構造の変化が認められました。
2)TEM-EDSによる元素分布解析
大気非暴露前後のEDSマッピング像を図2に示します。大気非暴露下の測定結果から、Ag、Ba、Snは均一分布しており、Oは検出されませんでした。一方、大気暴露後では酸化が起き、Ag、Ba、Sn分布の変化が認められました。
まとめ
当社保有の大気非暴露FIB-TEMを用いることにより易酸化材料を変質させることなく、結晶構造や元素分布について解析できます。本手法は電池材料や触媒材料などへの適用が可能です。
適用分野
易酸化材料、電池材料、触媒材料
キーワード
大気非暴露、FIB(集束イオンビーム)、TEM、形態観察、結晶構造、電子回折図形、EDS(元素マッピング)