概要
GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)はポリマーの分子量を評価する方法としてよく使用されています。ナイロンやポリエチレンテレフタレート(PET)は、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)の溶媒系でGPC測定することができますが、一般的なRI(示差屈折率検出器)を用いた測定ではそれぞれの分子量標準が入手困難であるため、通常はポリメチルメタクリレート(PMMA)換算での分子量となります。
今回、PMMA、ナイロン6、PETについて、GPC-MALS(多角度光散乱検出器)により絶対分子量を測定した結果をご紹介します。
分析
SCIENTIFIC POLYMER PRODUCS, INC.製の下記の3種類のポリマー(カッコ内は試料No.)を測定しました。
GPC測定条件は下記のとおりです。
- GPC : HLC-8220GPC (東ソー製)
- MALS : DAWN HELEOS (Wyatt Technology製)
- カラム : TSKgel α-M x2 (東ソー製)
- 溶離液 : 10mM トリフルオロ酢酸ナトリウム in HFIP
- 測定温度 : 40℃ (MALSは常温で使用)
- 流速 : 0.6mL/min
- 試料濃度 : 2.0mg/mL
- 注入量 : 100μL
- 分子量標準: PMMA (Agilent Technologies製)
結果と考察
GPC-MALS測定結果を図1に、GPC-RIによる換算分子量とGPC-MALSによる絶対分子量の計算結果を表1に示します。 図1のRIのクロマトグラムから、PMMA、ナイロン6、PETの順に溶出時間が遅くなっています。また、表1から換算分子量(Mw)の値はこの順番で小さくなっています。
しかしながら、図1、及び表1より3種類のポリマーの絶対分子量は、換算分子量が最も低いPETが最も高いことがわかります。この要因はPETの分子構造中に嵩高いベンゼン環があることが影響しているものと考えられます。すなわち、GPCの分離原理は分子量ではなく分子サイズであることから、同じ溶出時間(分子サイズ)で比較すると、PETはPMMAやナイロン6よりも分子量が大きいと考えられます。
試 料 | GPC-RI(PMMA換算分子量) | GPC-MALS(絶対分子量) | ||||
Mn | Mw | Mz | Mn | Mw | Mz | |
PMMA (#037A) | 1.3 | 3.6 | 6.3 | 2.2 | 3.4 | 5.6 |
Nylon 6 (CAT#034) | 0.77 | 3.0 | 5.8 | 1.4 | 2.3 | 3.1 |
PET (CAT#138) | 0.76 | 2.4 | 5.1 | 2.4 | 3.9 |
8.1 |
このように化学構造が異なるポリマーの分子量を比較する場合は、GPC-MALSによる絶対分子量の測定が有効です。