概要
窒化ガリウム(GaN)はパワーデバイスなどに応用されている重要な化合物半導体材料であり、GaN薄膜を形成した際の結晶性がデバイス性能に大きく影響することが知られています。そこで、薄膜の結晶構造解析が重要です。
今回、透過電子顕微鏡(TEM)を用いてナノ領域の結晶構造解析を行うナノビーム電子回折(ナノビームディフラクション:NBD)と、このNBDを二次元で測定するNBDマップ法により、GaN薄膜の結晶成長方向を解析しました。この手法は電池材料やセラミックスなどの結晶粒内の結晶構造分布解析に応用できます。
試料
窒化ガリウム(GaN)薄膜/サファイア基板
装置
・装置 | FE-TEM(日本電子製JEM-F200) |
・加速電圧 | 200kV |
・前処理 | FIB加工→Arイオンビーム処理 |
分析手法
ナノビーム電子回折は、ナノメートルオーダーに絞った電子線を試料に照射し、回折した電子線を測定する方法です。結晶試料の場合、特徴的な図形(回折図形)が得られ、この図形から様々な結晶についての情報が得られます。
これを、電子線を走査しながら行うことで、結晶分布に関する情報を二次元的に得る手法です。
結果
サファイア基板上に成長した窒化ガリウム薄膜について、基板と薄膜部分について電子回折図形を取得しました。その結果、図2の図形が得られ、それぞれの結晶方位はGaNが[100]、サファイアが[120]であることが分かりました。この方位は二つの結晶がつながって成長しやすいと考えられています(図3)。
この試料についてNBDマップを測定し、図2-①、②のスポットが表示される領域を色分けして表示した結果を図4に示しました。その結果、観察範囲内ではサファイア、GaNはそれぞれ同じ方位で成長していることを確認できました。
まとめ
NBDマップはデバイス性能に関係する結晶性の情報を二次元的に得られる手法です。
今回の解析では、サファイア基板上のGaN薄膜は、観察範囲内は同じ方位であり、結晶のつながりやすい方位で連続的に成長している様子を確認できました。