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技術資料
No.T2408 | 2024.06.20

揮発性物質の透過試験 DELTAPARM®による評価

概要

 フィルム等のガス透過試験は酸素等の無機ガスや水蒸気で行われるのが一般的です。今回、弊社ではガス透過試験装置DELTAPERM® (Technolox社製) の蒸気透過システムを導入し揮発性物質の透過試験が可能となりました。本技術資料では揮発性物質としてガソリンの透過性を評価した結果を紹介します。

揮発性物質の圧力センサ法透過試験

 一般的なガス透過試験の例として、図1に圧力センサ法のガス透過試験装置のイメージ図を示します。この方式では、測定サンプルによって隔てられた一方を試験ガスで加圧し、もう一方を減圧することで差圧を与えています。無機ガスの場合はガスボンベから減圧弁等を経て所定の圧力でガスを供給し、水蒸気の場合は所定の温度・相対湿度の水蒸気圧を供給します。このような機構では、揮発性物質は圧力の制御が難しく評価が困難でした。
 今回、蒸気圧制御が可能なガス透過試験装置DELTAPERM®の蒸気透過システムを導入しましたので、圧力センサ法での揮発性物質の透過試験が可能となりました。

【図1】一般的な圧力センサ法–ガス透過試験装置のイメージ図

【図1】一般的な圧力センサ法ガス透過試験装置のイメージ図

分析試料・分析方法

試 料

ポリイミド (PI0.075mmt)、ポリアミド66 (PA661mmt)

装 置

DELTAPERM-UH2M

試験ガス

ガソリン (石油学会認証成分試験用標準ガソリン)

測定条件

80℃, 100mbar

結果

 図2に測定より得られた各試料の透過度のトレンド (ガソリン蒸気導入後の透過度の挙動) を示します。PIではガソリン蒸気導入後、一度透過度が大きく増加した後に低下していき平衡に至りました。PA66も一度透過度が大きく増加した後に低下しますが、その後再度増加し平衡に至りました。ガソリンは混合物のため初期は低分子量成分が透過し、その後に高分子量成分が透過していくため、このような挙動になったと推測されます。
 表1には各試料の平衡時のガソリン透過度とガソリン透過係数を示します。PA66の方が試料厚みがあるため、透過度は低くなっていますが、厚みを乗じた透過係数はPIに比べてPA66の方が約1.7倍高くなりました。これらの結果から、80℃の雰囲気下ではPIの方がガソリン蒸気に対するバリア性が良好であることが明らかとなりました。

【図2】各試料の透過度のトレンド

【図2】各試料の透過度のトレンド

【表1】各試料の平衡時のガソリン透過度と透過係数 (80℃, 100mbar)
試料 ガソリン透過度 ガソリン透過係数
cm3/(m2・24h・atm) g/(m2・24h・atm) cm・cm3/(m2・24h・atm)

cm・g/(m2・24h・atm)

PI (0.075mmt) 5.8×106 2.5×104 4.3×104 1.9×102
PA66 (1mmt) 7.3×105 3.2×103 7.3×104

3.2×102

※ ガソリン蒸気を理想気体として取り扱い、平均分子量100 g/mol
 標準状態としてSTP (0, 100kPa, 22700cc) を使用して換算

 蒸気圧制御が可能なガス透過試験装置DELTAPERM®の蒸気透過システムを導入することで、圧力センサ法での揮発性物質の透過試験が可能となりました。紹介したガソリン以外の揮発性物質でも対応可能なものもございますので、詳細については、お気軽にお問合わせください。

適用分野
揮発性物質透過試験、ガス透過、ガスバリア
キーワード
シート、フィルム、基板

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