概要
一般的にガス透過試験装置は、検出器や配管が金属部品で構成されているため、アンモニアや塩素など腐食性ガスに対応できないという欠点があります。この欠点を克服するため、金属性の部品を減らしたガス透過性評価手法を確立しました。これにより、腐食性ガスのガス透過性評価が可能となりました。本技術資料では、ポリエチレン(PE)フィルムのアンモニアガス透過性を評価した事例をご紹介します。
試料
- 圧縮成形フィルム(膜厚 167~822µm)
- PP基材/PU接着剤
測定手順
【図1】に腐食性ガスの透過性試験の概略図を示します。まず、カップ内に試験ガス溶液を入れ、試料フィルムをかぶせた状態で、テドラーバック内に導入します。試験ガス溶液は揮発し試験ガスとなり、フィルムを透過した後、テドラーバック内に充満します。その後、テドラーバック内の試験ガス量(ガス透過量)の経時変化をガス検知管にて計測します(【図2】)。【図2】の傾きはガス透過速度に相当します。このようにして試料フィルムのガス透過性を評価することができます。
結果
一般的にガス透過度は膜厚に反比例します。本手法によりガス透過速度の膜厚依存性を評価し、分析法の妥当性を検証しました。【図3】にHDPEフィルムにおけるアンモニア透過量の膜厚依存性を示します。膜厚が小さくなるにつれ、ガス透過速度が大きくなる傾向が確認できます。【図4】にアンモニア透過速度の膜厚依存性を示します。透過速度と膜厚に反比例の関係が認められ、本手法の妥当性が確認されました。
【図5】に膜厚約240µmのHDPEおよびLDPEフィルムのアンモニア透過量の経時変化を示します。より結晶性の高いHDPEフィルムの方がLDPEフィルムよりも、ガス透過速度が低いことが認められました。【表1】にアンモニアのガス透過速度、およびガス透過速度のLDPE/HDPE比を示します。その他ガス(窒素、酸素および水蒸気)のガス透過度の文献値、およびLDPE/HDPE比も併記しました。アンモニアのLDPE/HDPE比はその他ガスのLDPE/HDPE比と近くなり、評価結果の妥当性が確認されました。
尚、本手法は室温において試験ガス溶液が揮発する必要があります。試験ガス溶液が室温で気体である、もしくは沸点が高く揮発しない場合は測定困難となります。
試料 |
ガス透過速度 (cc/min) |
ガス透過度* (cc/(m2・24h・atm)) |
透湿度* (g/(m2・24h) |
|
NH3 |
N2 |
O2 |
40℃,90%RH |
|
HDPE |
1.5×10-3 |
435 |
1250 |
5 |
LDPE |
6.6×10-3 |
2300 |
7000 |
16.5 |
LDPE/HDPE比 |
4.4 |
5.3 |
5.6 |
3.3 |
*石山孝佑(2005). 機能性食品包装材料, シーエムシー出版
まとめ
フィルムで密閉した透湿カップから透過したガスを捕集・定量することで、フィルムの腐食性ガス透過性を評価することが可能となりました。
謝辞
本技術資料の内容は地方独立行政法人大阪産業技術研究所のテクニカルシート(No.20-14)を参照し作成致しました。ここに感謝の意を表します(https://orist.jp/kouhou/technicalsheet.html)。