ホームchevron_right技術資料一覧chevron_right材料物性chevron_right熱特性chevron_right熱伝導率の異方性評価
技術資料
No.T2410 | 2024.06.28

熱伝導率の異方性評価

概要

 結晶性高分子は、分子鎖の配向に起因して熱伝導率に異方性が生じます。従って熱伝導率を評価する場合、膜厚方向と面内方向を区別する必要があります。本技術資料では結晶性高分子であり熱伝導率に異方性のあるポリエチレンシートと、非晶性高分子であり熱伝導率に異方性のないポリスチレンシートの膜厚および面内方向の熱伝導率を評価した事例を報告いたします。尚、熱伝導率測定の詳細に関しましては、弊社技術レポート(No.A1201No.T1302No.T2212)をご参照ください。

分析装置・測定条件

熱拡散率測定装置:LFA457(NETZSCH社製)
温度:23℃
雰囲気:大気

試料

ポリエチレン(PE
ポリスチレン(PS

シート成形

熱プレスによる圧縮成形

面内方向測定用の試料作製(ラメラ法)

 一般的に熱伝導率は膜厚方向で測定を行います。面内方向の熱伝導率を測定するために特殊な方法で試料を作製する必要があります。図 1に面内方向の熱伝導率測定のための試料作製スキームを示します。試料加工後、90°回転させることで面内方向の測定が可能となります。

【図1】面内方向の熱伝導率測定の試料作製スキーム

【図1】面内方向の熱伝導率測定の試料作製スキーム

分析事例

 表 1PEおよびPSシートの膜厚方向と面内方向の熱伝導率をまとめました。結晶性高分子であるPEの熱伝導率は面内方向の方が膜厚方向よりも大きいことが分かります。PEはシート成型(熱プレス)時に結晶の分子鎖軸が面内方向に配向します。この、分子鎖軸の配向が高熱伝導率の発現に起因すると考えられています1)。一方、非晶性高分子であるPSは熱伝導率に異方性がないことが分かります。
 尚、熱伝導率測定試料の推奨厚みは、膜厚方向で13mm、ラメラ法による面内方向で12mmです。

【表1】膜厚方向および面内方向の熱伝導率

測定試料

厚み(mm)

熱伝導率(W/m・K)

PEシート(膜厚方向)

1.95

0.35

PEシート(面内方向)

2.99

0.58

PSシート(膜厚方向)

1.01

0.18

PSシート(面内方向)

2.50

0.17

参考文献

1)Y. Shiraki et al., Macromolecules, 56(2023), 2429-2436

適用分野
高分子材料、熱伝導率、熱拡散率、熱物性
キーワード
結晶性高分子、異方性、面内方向、膜厚方向

CONTACTぜひ、お問い合わせください

弊社の分析技術について、納期やコストについてご検討の方は、
お問い合わせフォームより問い合わせください。