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技術資料
No.T2421 | 2024.10.24

スチレン-メタクリル酸メチル共重合体の組成分布解析(DOSY)

概要

 核磁気共鳴(Nuclear Magnetic ResonanceNMR)法は、分子の化学構造や運動性、相互作用などを調べる手法で、有機化学をはじめとして高分子化学、生物化学、医学等の広い分野で活用されています。
 本資料ではNMRスペクトル上で自己拡散係数が得られるDOSY法(T2401参照)のポリマーへの適用事例を紹介します。自己拡散係数は分子量と負の相関を示す(屈曲性高分子の希薄溶液においてDM 0.50.6)ことが知られており、DOSYにより共重合体の組成分布(モノマー含有量の分子量依存性)を評価することが可能です。

分析方法・分析装置

分析方法:1H DOSY
分析装置:700MHz NMR

結果

 試料の1H DOSY二次元スペクトルを図1(左)に示します。DOSYピークを縦軸(自己拡散係数logD)方向に分割して一次元NMRスペクトルを抽出し(図1右)、Stの芳香環CHMMAOCH3ピークの積分比より、それぞれSt含有量を算出しました(表1)。

【図1】試料の1H DOSY二次元スペクトル(左)および抽出した一次元NMRスペクトル(右)
(DOSYパラメータ:拡散時間Δ = 250 ms, 照射時間δ = 6 ms, 磁場勾配強度g = 1~43 G/cm、CONTIN)

【図1】試料の1H DOSY二次元スペクトル(左)および抽出した一次元NMRスペクトル(右)
(DOSYパラメータ:拡散時間Δ = 250 ms, 照射時間δ = 6 ms, 磁場勾配強度g = 1~43 G/cm、CONTIN)

【表1】 St含有量の算出結果
平均logD [m2/s] St含有量[mol%]
-11.50 10.7
-11.34 11.8
-11.19 11.9
-11.03 11.7
-10.87 11.2
-10.72 10.6
-10.56 9.8
-10.41 8.5
-10.26 6.1

 

 次に、図1(左)のStの芳香環CH青枠6.87.4 ppm)およびMMAOCH3赤枠2.83.8 ppm)を抽出して得られた各モノマーの拡散係数分布曲線上に表1St含有量をプロットした図を作成し(図2左)、比較のため同一試料の2D-HPLC(二次元HPLC、図2右)の結果と並べて示しました。
 DOSYより得られたSt含有量(図2左、黒点)は横軸右方向の低拡散(高分子量)側で増加傾向を示しており、2D-HPLCより得られたSt含有量(図2右、赤線)と類似の結果が得られている事が分かります。

 

【図2】 試料の1H DOSY解析結果(左)および2D-HPLC結果(右)
(DOSYの拡散係数分布曲線はモノマー間の比較をし易くするため最大強度で規格化)

【図2】 試料の1H DOSY解析結果(左)および2D-HPLC結果(右)
DOSYの拡散係数分布曲線はモノマー間の比較をし易くするため最大強度で規格化)

まとめ

 二次元NMR DOSY法をポリマーに適用することで、共重合体の組成分布を評価することが可能です。DOSY2D-HPLCと比べて煩雑な条件検討が不要であり、また、カラム吸着等で測定困難なポリマーにも適用可能です。

適用分野
高分子材料
キーワード
溶液NMR、2次元NMR、拡散係数、分子構造解析

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