概要
定量NMR(qNMR)は、分析対象と標準物質(定量用基準物質)の積分値を比較することで分析対象の絶対定量を行う分析法で、医薬品や食品等の分野で利用されています。
本資料では、qNMRにおいて最も高精度な定量が可能である内部標準法による有機化合物の純度分析事例をご紹介します。
原理・特徴
内部標準法によるqNMRでは、分析試料と標準物質を精秤し、それらを重溶媒で溶解した混合溶液を1H NMR測定します(図1)。1H NMRスペクトルのピーク積分値は分子数(モル濃度)と構成プロトン数に比例するため、式1により分析試料の純度を算出することが可能です。
qNMRは、GCやHPLCのようなクロマトグラフィーと比べて、分析対象と同一の標準物質や検量線が不要であるという利点があります。また、分子中のプロトンを検出するため、特定の化学構造(UV吸収等)に依存せずほぼ全ての有機化合物が定量対象となります。
分析方法・分析装置
分析方法 | 1H NMR |
分析装置 | 500MHz NMR |
試料
分析試料 | インドメタシン |
内部標準物質 | 1,4-BTMSB-d4 |
調製 | 試料(約10 mg)と内部標準物質(約1.5 mg)を精秤し重メタノールで溶解 (n=3) |
結果
得られたスペクトルを図2に示します。定量値の算出には図2の内標ピークおよびピーク8を用いました。
本分析では、試料調製および各試料溶液の測定をそれぞれ3回ずつ行い、平均純度と相対標準偏差を算出しました(表1)。得られた相対標準偏差は0.29%となり、再現性の良い定量結果となりました。
純度(%) | 相対標準偏差(%) | ||
溶液1 | 99.4918 | 99.90 | 0.29 |
99.5330 | |||
99.5850 | |||
溶液2 | 100.069 | ||
100.061 | |||
100.157 | |||
溶液3 | 99.899 | ||
100.102 | |||
100.218 |
まとめ
定量NMRは、有機化合物の高精度な定量が可能な分析法です。また、標準物質や化学構造の制限が少ないためGCやHPLCに比べ汎用性が高く、幅広い分析対象に適用できます。
参考文献
- 「qNMRプライマリーガイド」ワーキング・グループ著. qNMRプライマリーガイド基礎から実践まで.共立出版, 2015, 174.
適用分野
有機材料、医薬品、食品
キーワード
溶液NMR、定量NMR