概要
セラミックスは様々な元素を添加することによりその特性向上が図られています。今回は、焼結助剤の希土類元素であるランタンを添加したアルミナ–ムライトセラミックス焼結体について、加熱しながら構造変化をリアルタイムで高倍率観察できるIn-situ加熱TEM観察法により、1300℃におけるセラミックスの高温挙動を観察しました。
装置と分析手法
装置 | FE-TEM(日本電子製JEM-F200)+加熱TEMホルダ(DENSsolutions製Wildfire) |
前処理 | 集束イオンビーム(FIB)によるTEM観察試料作製 |
測定内容 | In-situ加熱TEM観察(その場加熱TEM観察) 加熱温度:室温~1300℃ |
試料
La添加アルミナ–ムライトセラミックス焼結体
結果
1)加熱前
In-situ加熱TEM観察を行う前に加熱前試料の観察を行いました。EDS元素マップより添加したLaはアルミナやムライトの粒子間に存在していることが分かりました。さらにLa領域の電子回折図形を取得し結晶性を解析したところ、ハローパターンが得られアモルファス(ガラス相)であることが分かりました。
2)In-situ加熱TEM観察(室温~1300℃)
この試料を室温から1300℃まで昇温し保持したままIn-situ加熱TEM観察を行いました。その結果、粒子間に存在していたLaガラス相(図2a黄色矢印の暗く見える部分)が移動することで空隙が形成(図2b、黄色矢印の明るく見える部分)された様子を観察できました。EDS元素マップからも元素が検出されない領域(図3の黒い領域)が存在し、空隙の存在を確認できました。Laガラス相が液相となって移動しやすくなり、空隙が形成されたと考えられます。
TEM観察では薄片試料としているため、図4のようにLaガラス相が移動し空隙へ変化したと推定されます。実際の焼結中でも液相となったLaガラス相の移動が容易なため焼結が進行しやすくなると推測されます。
このようにLa添加アルミナ–ムライトセラミックスの焼結機構をIn-situ加熱TEM観察結果から推定することができました。
まとめ
希土類元素を添加したセラミックスのIn-situ加熱TEM観察を行い、1300℃における添加元素の高温挙動を観察できました。In-situ加熱TEM観察は、1300℃までの高温下におけるナノオーダー構造変化をリアルタイムで捉えられる有用な手法です。
参考文献
- 中村和人、阿部真由美、東ソー研究・技術報告, 65, 59(2021)
- 中村和人、FINE CERAMICS Report, 42, No.2春号(2024)