概要
ポリマーの多くは互いに非相溶である為、ポリマーブレンドは相分離構造を形成します。相分離構造はポリマーの物性と、密接に関係することから、それらを観察する技術は重要な役割を担っています。本資料では、図1に示すポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)のブレンドフィルムの相分離構造を可視化した例をご紹介します。
従来、このような観察はSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて行っています。図2に示すようにSEM観察で相分離構造は観察できますが、海島に相当する成分の定性はできませんでした。そこでAFM-IRにより組成分布を可視化しました。
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【図1】PE、およびPPの構造
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【図2】試料のSEM像
装置構成
空間分解能10nmでケミカルイメージングが可能な最新のAFM-IRです(装置紹介 A2301)。
結果
AFM-IRを用いて、PPに特徴的なメチル分岐(CH3;1377cm-1)でのケミカルイメージングを行ったところ、PPドメインがイメージングされました。また、それらがMD方向(フィルムの成形方向)に引き伸ばされている様子を観察することができました。従来のSEM観察では困難であった、定性的な観察が可能となりました。
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【図3】波数イメージング(明部:PP、暗部:PE)
まとめ
AFM-IRを用いたケミカルイメージングにより、PE/PPブレンドフィルムの相分離構造を可視化することができました。さらに、観察方向によるドメイン形状の違いも明らかになりました。
適用分野
プラスチック・ゴム、その他有機製品
キーワード
PE、PP、ポリマーブレンド、相分離