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技術資料
No.T2431 | 2025.02.18

ピリジン吸着FT-IR法によるゼオライトの酸点解析

概要

 ゼオライトには固体酸点として作用する、性質の異なる酸点(ブレンステッド(B)酸点、ルイス(L)酸点)が存在し、ピリジン吸着FT-IR法は各酸点を区別して評価ができる有力な手法です【図1,2】。また、IRスペクトルの40003000cm-1には水酸基(-OH)由来のピークが得られることが良く知られています。そこで、ピリジン吸着前後のゼオライト触媒のOH基ピーク変化を測定し、構造解析した事例を紹介します。

【図1】ピリジン吸着モデル図

【図1】ピリジン吸着モデル図

【図2】ピリジン吸着後のFT-IRスペクトル(1600-1400cm-1)

【図2】ピリジン吸着後のFT-IRスペクトル(1600-1400cm-1

分析方法・分析装置

 測定フローを【図3】に示します。まず、試料を真空加熱して吸着水除去した後のIRスペクトル①を測定します(バックグラウンド測定、「ピリジン吸着前」)。その後、測定室にピリジン蒸気を導入して試料に吸着させ、IRスペクトル②(「ピリジン吸着後」)を取得します。
 ②「ピリジン吸着後」から①「ピリジン吸着前」を差し引くと、ゼオライト触媒のOH基変化の様子を調べることが出来ます。

測定条件

FT-IR装置

Varian 660-IR

透過法アタッチメント

マルチモードIRセル

測定法

透過法

測定波数範囲

4000-400cm-1

分解能

4cm-1

積算回数

128回

【図3】ピリジン吸着FT-IR測定フロー

【図3】ピリジン吸着FT-IR測定フロー

結果

【図4】②「ピリジン吸着後」と①「ピリジン吸着前」の差スペクトル(4000-3400cm-1)

【図4】②「ピリジン吸着後」と①「ピリジン吸着前」の差スペクトル(4000-3400cm-1

 2種類のゼオライト触媒(A,B)の測定結果を【図4】に示します。
 ゼオライト触媒では、ピーク位置から各種OH基の区別が出来ます。
 (約3780cm-1:骨格外Al-OH、約3740cm-1Si-OH、約3600cm-1B酸点(OH)

 【図4】より、これらのピークが負の方向に観測されたため、ピリジン吸着前後でOH基が減少していることが分かります。また、ゼオライトABに比べてB酸点(OH)の減少が大きく、【図2】の結果(B酸点に吸着したピリジンが多い)とも整合しています。

 一方、ゼオライトBは高波数側(約3780cm-1)の骨格外Al-OHの減少が明確に見られています。これは、ゼオライト構造から脱離したAl成分(脱Al成分)にもピリジン分子が吸着している可能性を示しています。このような成分は、ゼオライト構造(細孔径等)と無関係のため、触媒性能にあまり寄与しない酸点であると思われます。

 このように、ピリジン吸着前後のOH基のピーク挙動を解析すると、吸着サイトに関する情報が得られます。

適用分野
ゼオライト、セラミックス、触媒、その他無機製品等
キーワード
FT-IR、ピリジン吸着、透過法、ブレンステッド酸点、ルイス酸点、B酸点、L酸点

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