概要
ポリマーアロイでは、ナノスケールのミクロ相分離構造を評価することが特性への理解に繋がります。透過電子顕微鏡(TEM)により、ブロック共重合体のミクロ相分離構造を観察した事例を紹介いたします。
分析装置・分析方法
装置 | 電界放出型透過電子顕微鏡(FE-TEM) |
試料作製方法 | ミクロトームによる超薄切片作製および電子染色※ |
試料
体積分率が異なるポリイソプレン(I)-ポリスチレン(S)-ポリ(2-ビニルピリジン)(P)トリブロック共重合体フィルム
① I/S/P=0.33/0.33/0.33
② I/S/P=0.23/0.52/0.25
(試料提供:名古屋大学未来社会創造機構量子化学イノベーション研究所 高野敦志 特任教授)
結果
体積分率が異なる2種類のISPトリブロック共重合体フィルムのTEM観察結果を図1に示します。試料①は層構造、試料②は共連続構造が観察されました。ISPトリブロック共重合体は体積分率によってどのような相分離構造を形成するかが知られており1)、先行研究と一致した相分離構造が観察できました。

【図1】体積分率が異なるISPのTEM観察結果(Iドメインが染色により暗色に見える)
参考文献
1) Y.Matsushita, Journal of Polymer Science, Vol.38, 1645-1655(2000).
参考情報
※電子染色
ポリマー材料は主に軽元素(C,N,H,O)で構成されており、構造や組成が異なる場合でも電子線の散乱能の差が小さいため、TEM像のコントラストが低く、構造を観察できません。
そこで、重金属を含む染色剤で試料の散乱能を高め、TEM像のコントラストを高くする電子染色を行います。
組成や分子構造、結晶性の違いにより染色剤との反応性や拡散係数に差が生じるため、試料中に留まる染色剤(重金属)の量にも差ができます。
重金属が多い箇所ほどTEMでは暗く観察され、少ない箇所ほど明るく観察されるため、軽元素のみで構成されているポリマー材料でも内部の構造を観察することができます。