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技術資料
No.T2512 | 2025.09.30

非晶質シリカの構造解析

概要

 物質の構造を解析する手法として、結晶試料にはXRD測定によるRietveld解析がよく利用されますが、非晶質や結晶性の悪い試料に対しては適用出来ません。そのような材料には、X線全散乱測定からの二体分布関数の導出(PDF解析)が有用であり、局所的な構造情報を抽出することが可能です。

分析方法・分析装置

 非晶質のシリカ粉末をキャピラリーに詰めてX線全散乱測定を行い、二体分布関数を導出しました。

装置

リガク社製 SmartLab

X線源

Mo(0.709Å)
出力9kW60kV150mA

測定法

円筒透過法(キャピラリー法)

測定範囲

2θ=3160°

【図1】キャピラリー測定

【図1】キャピラリー測定

結果

  X線全散乱測定の結果を【図2】に示します。試料(シリカ粉末)由来の散乱を得るため、ブランクの差引きや吸収補正、非干渉性散乱(コンプトン散乱)の除去1)等の各種補正を行い、逆FT変換することで試料の二体分布関数(還元PDFPair Distribution Function G(r))を取得できます。【図3

【図2】X線全散乱測定結果

【図2】X線全散乱測定結果

【図3】シリカ粉末の二体分布関数G(r)

【図3】シリカ粉末の二体分布関数G(r)

 G(r)はある原子から距離rの位置に別の原子が存在する確率の程度を表しています。Si-O結合に対応する1.6Åのピークの他、非晶質シリカの部分構造である4員環や6員環由来のピークが確認出来ました。

まとめ

 半導体や電池関連分野で注目が高まっている非晶質材料は、原子が不規則に配列して長周期構造が見られないため、構造解析が困難な物質の一つです。X線全散乱測定により、通常のX線回折で捉えられない非晶質の短距離構造に関する情報が得られ、物質特性を理解する一助となることが期待されます。

参考文献

1)

B. J. Thijsse:J. Appl. Crystallogr., 17(1984), 61.

適用分野
無機材料、ガラス、その他無機製品、電池、半導体
キーワード
アモルファス、非晶質、粉末、X線全散乱測定、PDF解析、動径分布関数、二体分布関数

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