【概要】
FcRⅢAカラム※は、抗体Fc領域の糖鎖を認識し、活性に基づき抗体を分離する世界初のアフィニティーカラムです。FcRⅢAカラムの抗体負荷量を大きくした分取用カラムを用いて抗体を迅速に分離・分取し、得られた抗体画分のN結合型糖鎖の構造解析を行うことが可能です(Fig. 1)。 ※東ソー株式会社開発
【抗体医薬品Aの解析例】
市販の抗体医薬品AをFcRⅢA分取カラムで分離・分取し、抗体活性測定および糖鎖解析をした例を以下に示します。抗体医薬品AをFcRⅢA分取カラムで分離し、ピークごとに分取しました。分取したフラクションはそれぞれFcRⅢA分析カラムにより純度の確認を行い、目的のピークがほぼ単離できていることを確認しました(Fig. 2)。
分取した各フラクションのADCC(抗体依存性細胞障害)活性を測定した結果を、Fig. 3に示します。ADCCをルシフェラーゼの発光シグナルにより検出する手法※2を用いて、活性測定を行いました。その結果、発光強度比はカラムの溶出時間の遅いフラクションほど大きく、EC50(50%効果濃度)はカラムの溶出時間の遅いフラクションほど小さいことが分かりました(Table 1)。以上から、カラムの溶出時間の遅いフラクションほどADCC活性が高いと考えられます。 ※2 ADCCレポーターバイオアッセイ(プロメガ㈱)
EC50(μg/mL) | |
フラクションA1 | 0.14 |
フラクションA2 | 0.12 |
フラクションA3 | 0.10 |
各フラクションの抗体の糖鎖解析と、糖鎖(G0F、G1F、G2F)の組成比較をLC-MSにより行いました(Fig. 4)。FcRⅢAカラムの溶出時間の遅いフラクションほど、非還元末端側にガラクトースが付加した糖鎖の割合が多くなる傾向が確認されました。糖鎖の非還元末端側ガラクトース残基の数が多いほど抗体のCDC(補体依存性障害)活性が高いことが報告されており1)、糖鎖解析の結果から、FcRⅢAカラムの溶出時間が遅いフラクションほどCDC活性が高いことが推測できます。
1) Hodoniczky J., Zheng Y. Z., James D. C., Biotechnol. Prog., 2005, 21, 1644−1652
【抗体医薬品Bの解析例】
上記とは異なる抗体医薬品BをFcRⅢA分取カラムで分離・分取し、糖鎖解析をした例を以下に示します。Fig. 5に分取カラムによるクロマトグラムと分取フラクションの分析カラムによる純度確認結果を示します。分析カラムにより目的のピークがほぼ単離できていることを確認しました。
各フラクションの抗体の糖鎖(G0F、G1F、G2F)組成比較をLC-MSにより行った結果、抗体医薬品Aの場合と同様FcRⅢAカラムの溶出時間の遅いフラクションほど非還元末端側にガラクトースが付加した糖鎖の割合が多くなる傾向が確認され、CDC活性が高いことが推測出来ます (Fig. 6)。
FcRⅢAカラムで分取した抗体の糖鎖構造解析は、抗体のロット間差分析、抗体産生細胞培養状態のモニタリング等に有用であると考えられます。
FcRⅢAカラム開発の一部は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「次世代医療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業」の支援によって行われた。
課題番号:JP17ae0101003