概要
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)は、順相モード、逆相モード、サイズ排除モードなど、いくつかの原理に基づいた分離が行われています。ポリマーの分離については、サイズ排除モード(SEC)による分子量測定が中心となっています。しかし、一般の有機化合物と同様に、順相モードや逆相モードによる分離を用いることにより、様々な情報を得ることが可能となります。ここでは、標準ポリスチレン(PS)を用いたサイズ排除モードと逆相モードとの違いについての実例をご紹介します。
内容のご紹介
分子量の異なるPSについて、スチレンゲルを充填したSECカラムを用いたSECモード(GPC)と、ODSカラムを用いたグラジエントHPLCによる逆相モードでの測定を行い、両者を比較しました。
[分析条件]
①サイズ排除モード
カ ラ ム : TSKgel SuperH 2500 (6.0mmφ×15cm) ×4本 (東ソー製)
移 動 相 : THF
検 出 器 : 示差屈折率計(RI)
カラム温度 : 40℃
流 速 : 0.6mL/min.
試 料 濃 度 : 1mg/mL
注 入 量 : 20μL
②逆相モード
カ ラ ム : TSKgel ODS-100V (4.6mmφ×15cm) (東ソー製)
移 動 相 : アセトニトリル/THF移動相による溶媒グラジエント
検 出 器 : 蒸発型光散乱検出器(ELSD)
カラム温度 : 40℃
流 速 : 1mL/min.
試 料 濃 度 : 1mg/mL
注 入 量 : 10μL
[結果]
サイズ排除モード(GPC)で得られたクロマトグラムを図1に示します。サイズ排除モード(GPC)はよく知られているように、高分子量から低分子量へと溶出しています。
これに対し、逆相モードにより得られたクロマトグラムを図2に示します。逆相モードはサイズ排除モードとは逆に、低分子量成分から高分子量成分へと溶出し、さらに分子量が低いPSについては、非常に良好に分離していることがわかります。しかし、分子量が増加すると、徐々に各成分が分離しにくくなっています。
逆相モードによる分離は、試料分子とカラムとの相互作用の違いに起因するため、低分子量ではモノマー1個分の構造の違いによる影響が大きいのに対し、高分子量になると、その影響が小さくなるためと考えられます。従って、逆相モードや順相モードによる高分子の分離は、SECよりも分離能は高いものの分離できる分子量に限界があると考えられます。
図1 サイズ排除モード(GPC)による標準PSのクロマトグラム
(図中の数字はスチレンユニット数を示す)
図2 逆相モードによる標準PSのクロマトグラム
(図中の数字はスチレンユニット数を示す)
なお、今回用いた逆相モードの測定条件では、最も低い分子量のピーク(n=1,2)が検出されていません。これは、今回用いた検出器(ELSD)の特性によるもので、移動相を噴霧する際に、試料も蒸発してしまったためと考えられます。(今回は、高分子量PSの検出を優先する設定としたため、低分子量PSについては検出不十分になったと考えられます)