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技術資料
No.T1815 | 2018.05.31

異なるX線源によるESCA分析

~リチウムイオン電池材料と半導体材料を例に~

概要

X線光電子分光分析装置(ESCA, XPS)は、材料表面(数nmオーダー)の元素組成や化学状態解析に有用な分析手法です。X線を照射して材料から放出される光電子のピークにより構造解析を行いますが、同時にオージェ電子も放出されるため、ピークが干渉してしまう場合があります。
光電子とオージェ電子ピークは、照射するX線源を変えることで区別できます。汎用的な2種類のX線源(AlKα線、MgKα線)を使い分けて、リチウムイオン電池材料と半導体材料を分析した事例を紹介します。

分析事例の紹介

<NiMnCo複合酸化物>

リチウムイオン電池(LIB)の正極材として使用されるNiMnCo複合酸化物を測定しました。
NiMnCo複合酸化物では、X線源がAlKα線の場合、Ni光電子とMnおよびF(バインダー由来)オージェ電子ピークが干渉します。X線源をMgKα線に変えることで干渉ピークが除外でき、Ni化学状態の解析精度が向上します。【図1】

【図1】 NiMnCo複合酸化物のNi2p3/2ピーク領域 (YスケールはNi2p3/2ピーク強度で規格化)

<窒化ガリウム(GaN)>

GaNは、発光デバイスやパワーデバイス用途として注目される半導体材料です。デバイス特性は表面構造に影響を受けるため、GaN基板表面の組成や不純物の把握は重要となります。
AlKα線はN光電子とGaオージェ電子ピークが干渉しますが、MgKα線は干渉ピークを除外できるため、Ga/N組成比の解析に適しています。【図2】
一方、MgKα線はC光電子とGaオージェ電子のピークが干渉しますが、AlKα線は干渉ピークを除外できるため、材料表面の有機汚染物を評価することができます。【図3】

【図2】 GaN単結晶基板のN1sピーク領域
【図3】 GaN単結晶基板のC1sピーク領域

このように、ESCAでは分析試料や測定元素に応じたX線源の選択が必要です。干渉ピークを除外することで、材料本来の構造解析が可能となります。

適用分野
電池・半導体材料、フラットパネルディスプレイ、その他無機製品、その他有機製品
キーワード
ESCA、XPS、AlKα線、MgKα線、リチウムイオン電池、LIB、窒化ガリウム、GaN

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