概要
本技術資料では走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察事例をご紹介します。SEMは10倍程度の低倍率から1万倍を超える高倍率まで評価でき、様々な観察に用いられます。また、エネルギー分散型X線分光器(EDS)を組み合わせる事により、微小部位の元素組成やマッピングによる評価が可能です。
試料と評価結果
本技術資料では、金属配管内に生じた異物の観察事例を紹介します。
異物は比較的剝れやすく、未処理のまま断面加工すると脱落する恐れがありました。そこで今回は異物ごと配管内部を樹脂包埋して異物を固定化し、断面を作製しました。
図1に断面作製手順と得られた断面の実態顕微鏡写真を示します。狙った異物を脱落させることなく、断面を作製できました。同様の手順で、腐食が見られた部分の断面も作製可能です。
作製した異物断面のSEM-EDS観察結果を図2に示します。スケールはすべて同一です。
左上が酸素(O)、右上が鉄(Fe)、左下がりん(P)の元素マッピング、右下がSEM二次電子像(形状像)です。元素マッピングは、図左側のカラースケールで示すように、濃度が高いほど明るく表示されます。配管はFeの濃度が高く検出されました。Feは配管の主要構成元素です。
一方、図中央に示された異物部分は、配管成分に比べ、Feが少なく、O、Pが多く検出されました。この事から、異物はFeが酸化した成分であることが分かります。また、異物表面でP成分が強く観察されました。Pは配管の防食処理で使用されるりん酸亜鉛由来のものだと推定されます。この場合、防食処理が不均一(均一なりん皮膜が形成できなかった)ため鋼材表面から腐食が発生したと考えられます。
適用分野
異物、組成分析、層構造、相構造、相分離
キーワード
無機、構造材、鉄鋼、断面、配管