概要
X線光電子分光法(ESCA/XPS)は、試料表面の元素及び化学結合状態を分析できる手法です。分析深さは数nm程度であり、表面汚染に敏感なため、正しい分析結果を得るには試料の取り扱いに特に注意する必要があります。
試料を送付する際の包装方法についてのご質問が多いため、分析試料の包装方法による表面汚染を検証し、適切な包装方法についてご紹介いたします。
検討内容
包装方法(下図①~④)による表面汚染の差異をESCAにて測定し、検証しました。
結果
包装方法が異なるSiO2薄膜のESCA分析結果を図1及び2に示します。①アルミホイル、②薬包紙、③試料ケースでは、有機汚染を最小限に抑制できることが分かりました。一方、④チャック付きポリ袋の場合、多くの有機汚染物(C-C等)が検出され【図1】、その影響により試料由来であるSiピーク強度(Si-O)の減少が確認されました【図2】。
表面汚染の検証結果をもとに、分析試料の適切な包装方法や注意点について、以下にご紹介します。
上記包装方法でも、最表面では微量の有機汚染物(大気汚染由来等)が検出される可能性があります。
当社ではArガスクラスターイオン銃(Ar-GCIB)クリーニングにより、最表層の有機汚染物を除去し、試料本来の表面状態を評価することが可能です。お気軽にご相談下さい。
【関連資料】No.T1303:GCIB-ESCAによる無機材料表面クリーニング
適用分野
セラミックス、その他無機製品、フラットパネルディスプレイ、電池・半導体材料
キーワード
自然酸化、大気汚染、X線光電子分光法、ESCA、XPS、GCIB