概要
EMS粘度計は、試料溶液に入れた金属球(プローブ)を回転させることにより粘度を求めます(弊社装置紹介 No.A1902)。これまで、プローブとしてアルミ製の球を用いていたため、アルミを腐食するような試料の測定ができませんでした。
本技術資料では、新たに導入した耐薬品性プローブを用いて腐食性液体の粘度測定を行った事例についてご報告いたします。
測定原理
EMS粘度計では、試料溶液中の金属球(プローブ)に外部磁場を加えて回転させ、その回転速度からプローブに加わる粘性抵抗を評価し、粘度を求めます【図1】。
分析方法・分析装置
EMS 粘 度 計 : | EMS-1000(京都電子工業株式会社製) |
温 度 範 囲 : | 0~200℃(20℃以下は要相談) |
所有プローブ : | 【表1】に所有プローブ一覧を示します。 弊社では、腐食性液体用に2種類の耐薬品性プローブを所有しています。 |
プローブの種類 |
大きさ |
試料量 |
粘度測定範囲(mPa・s) |
備考 |
Alプローブ |
φ2mm |
300µl |
0.1~100,000 |
Alを腐食する液体(酸・塩基)には |
φ4.7mm |
700µl |
10~1,000,000 |
||
耐薬品性Tiプローブ |
φ5mm |
700µl |
10~100,000 |
腐食性液体の粘度測定に対応 |
不働態化プローブ |
φ2mm |
300µl |
0.1~100,000 |
試料
1) ゴムラテックス (pH10~12)
2) 0.1M HCl水溶液 (pH1)
結果
1) ゴムラテックス (pH10~12)
耐薬品性Tiプローブを用いてゴムラテックスの粘度η の温度変化を測定しました。【図2】に粘度測定結果を示します。本結果より、lnη と絶対温度の逆数(1/T)の片対数プロット(アンドレートプロット【図3】)を作成した結果、相関係数0.999以上となり、分析結果の妥当性を確認することが出来ました。
2) 0.1M HCl水溶液 (pH1)
不働態化プローブ用いて、0.1M HCl水溶液の粘度を30分間測定しました。【図4】に粘度測定結果を示します。不働態化プローブでは、強酸溶液の粘度を30分間以上安定して測定することが可能です。
【図4】 EMS粘度計による粘度測定結果 (試料;0.1M HCl水溶液 (pH1))
まとめ
EMS粘度計では、耐薬品性プローブを用いることで、腐食性液体(酸・塩基、イオン液体)の粘度を精度よく測定することが可能です。