概要
固体核磁気共鳴法(固体 NMR)は、固体試料を非破壊でそのまま測定でき、材料の化学構造や分子の運 動性を解析することが可能です。ここでは、固体 27Al NMR によるゼオライト構造の解析事例を紹介します。
分析事例
ゼオライトは骨格中に細孔を有する結晶性アルミノケイ酸塩であり、吸着材や各種触媒として幅広く利用されています。その骨格はTO4(T=Si または Al)を基本単位とした四面体構造で、その機能を解析する際には、骨格のAl状態の把握が重要となります。ここでは、後処理条件の異なるゼオライトについて、Al状態を27Al MAS NMR測定により調べました【図1】。
【図1】 ゼオライトの27Al MAS NMRスペクトル
配位数の異なるAl成分が異なる化学シフトに観測され、ゼオライト骨格中の4配位Alピーク(AlO4)、ゼオライト骨格外の6配位Alピークが観測されました。6配位Alの構造としては、AlO+、Al(OH)2+、AlOOH等が提案されています。1)
4配位Alピークを試料間比較すると、条件Bのゼオライトでピーク面積が大きく、ゼオライト骨格中のAl量が多い傾向でした。ゼオライトでは、合成後の後処理時に骨格からAl原子が脱離(脱アルミニウム)することが知られており、後処理条件の違いが脱アルミニウムの程度に影響したと考えられます。
一方、6配位Alピークを比較すると、条件Bのシャープなピークが条件Aでは観測されませんでした。条件Aの後処理によって、対称性の高い6配位Al成分がブロードな非晶質成分に変化したと考えられます。
参考文献
- 1) R. D. Shannon, K. H. Gardner, R. H. Staley, G. Bergeret, P. Gallezot, A. Auroux, J. Phys. Chem., 89, 4778(1985).
適用分野
固体NMR、構造解析
キーワード
セラミックス・ゼオライト、その他無機製品