概要
GPC(SEC)に光散乱検出器を接続することにより、ポリマーの絶対分子量を求めることが可能となります。ここでは、通常のGPC(SEC)法で得られる標準ポリマー換算分子量と絶対分子量の違いについて、測定例を示しました。
分析事例の紹介
化粧品などに広く用いられるヒアルロン酸は非常に分子量の高い水溶性ポリマーです。今回は、市販のヒアルロン酸(カリウム塩, SIGMA製)について、GPC-MALSを用いた絶対分子量の測定と、2種類の分子量標準による較正曲線を用いて得られた換算分子量を比較しました。測定条件は下記に示す通りです。
[分析条件]
カラム | TSKgel GMPWXL (7.8mmφ×30cm) 2本 (東ソー製) |
溶離液 | 0.1M-NaNO3水溶液 |
カラム温度 | 40℃ |
流速 | 1mL/min |
試料濃度 | 1mg/mL |
注入量 | 100μL |
標準試料 | ポリエチレンオキシド(PEO)、プルラン |
[結果]
試料のGPC-MALSにより得られたクロマトグラムと絶対分子量、および標準試料であるポリエチレンオキシド(PEO)、プルランの較正曲線を重ね書きしたものを図1に示します。どちらの較正曲線についても、ヒアルロン酸の絶対分子量との差が大きいことがわかります。また、ヒアルロン酸は分子量が高いため、最も分子量の高い標準試料よりも早く溶出しており、分子量を算出するためには、較正曲線の外挿部分を用いなければなりません。
絶対分子量-溶出時間の関係を関数近似して得られた微分分子量分布曲線と、それぞれの較正曲線を用いて求めた換算分子量の微分分子量分布曲線を図2に、平均分子量を表1に示します。
3種類の微分分子量分布曲線は、形状が大きく異なっており、また表1から、2種類の換算分子量については、いずれも非常に大きな値となっていることがわかります。特にプルラン換算値では、較正曲線の外挿部分の影響が非常に大きいと考えられます。
以上のように、較正曲線を用いた分子量測定は、比較的容易である反面、ヒアルロン酸のように非常に分子量の高い水溶性ポリマーの分子量測定には問題があると考えられます。これに対し、GPC-MALS法は絶対分子量が得られるだけでなく、ヒアルロン酸のような高分子量のポリマーに対しては、検出感度が向上するメリットがある*)ため、より有効な方法であると言えます。
*)光散乱法では、検出感度は試料濃度と分子量に依存するため、分子量が高い試料ほど検出感度が高くなります。ただし、同じ理由のために、低分子量では感度が低下するというデメリットもあります。

【図1】GPC-MALSによるヒアルロン酸の絶対分子量測定結果と標準ポリマーによる較正曲線

【図2】GPC-MALS、GPC法により得られたヒアルロン酸の微分分子量分布曲線
Mn | Mw | Mz | Mw/Mn | |
---|---|---|---|---|
(×104) | ||||
絶対分子量 | 24 | 55 | 120 | 2.3 |
PEO換算 | 23 | 120 | 360 | 5.1 |
プルラン換算 | 52 | 660 | 11000 | 13 |