概要
透過電子顕微鏡(TEM)による微細構造解析には、高分解能観察、電子線回折など各種手法が用いられます。格子像の高速フーリエ変換(FFT)法は、数~数10nmの範囲で結晶構造が解析可能な手法です。この手法は、結晶性材料(セラミックス、金属、半導体等)に適用できます。
リチウムイオン電池(LIB)では、正極活物質の微細構造変化が電池性能劣化の要因の一つと考えられ、微細構造の情報を得ることは重要です。今回、充放電前の正極材[LiCoO2]の格子像観察を行い、得られた像のFFTパターンを解析することで、10nm範囲の結晶の種類がわかりました。
試料
コバルト酸リチウム系正極材 [LiCoO2 ](充放電前)
装置と分析手法
装置:電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)
手法:格子像のFFTパターン解析
格子像のFFTでは、電子線回折図形に相当するパターンが得られます。
そこで、回折図形シミュレーションとの比較解析により、結晶構造を決定します。
結果
コバルト酸リチウム系正極材の格子像(図1)について、10nm四方の領域のFFTパターンを取得しました(図2)。このパターンは、図3の回折図形シミュレーションと一致するため、この領域は層状岩塩型構造であることがわかりました。
以上のように、格子像のFFTパターン解析により充放電前正極材の微小領域の結晶構造を同定できました。また、大気非暴露条件下において充放電後との比較も可能です。
適用分野
無機材料、構造解析、形態観察、大気非暴露
キーワード
電池材料、酸化物