概要
リチウムイオン電池(LIB)は小型軽量で大容量な二次電池です。現在は携帯電話やスマートフォン等、持ち運び可能な情報端末に広く利用されていますが、 電気自動車や蓄電システムといった大型電源用途としても開発が進められています。
当社ではこれまでに培った分析技術を用いて、LIBを構成する各種材料に ついて様々な解析を行っています。
LIBの構造
LIBは正極と負極がセパレーターで仕切られた構造をしており、電解液を介してLiイオンが電極間を移動することによって充放電されます。
LIBで使用される材料の例
正極 | 活物質 | コバルト酸リチウム ニッケル酸リチウム マンガン酸リチウム NiMnCo複合酸化物Li塩 リン酸鉄リチウム |
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バインダー | スチレン-ブタジエン共重合体(SBR) ポリフッ化ビニリデン(PVDF) |
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導電助剤 | カーボンブラック | |
集電体 | アルミニウム箔 | |
負極 | 活物質 | 黒鉛 |
バインダー | スチレン-ブタジエン共重合体(SBR) ポリフッ化ビニリデン(PVDF) |
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導電助剤 | カーボンブラック | |
集電体 | 銅箔 | |
セパレーター | ポリオレフィン | |
電解液 | エチレンカーボネート ジメチルカーボネート |
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電解質 | リチウム塩(LiPF6,LiBF4等) |
LIBの解析
LIBを構成する材料は多岐に渡るため、各種材料及びそれらの複合体について解析する技術が求められます。 当社では、以下のように様々な材料の解析に対応出来る技術を構築しております。
LIB構成材料の解析技術
材料 | 解析内容 | 分析手法 |
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正極 | 活物質/バインダー/導電助剤の分布 | 断面SEM |
活物質の同定 結晶性評価 結晶構造解析 |
TEM ラマン分光 X線回折 |
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活物質中金属元素の価数評価 | ESCA(XPS) | |
バインダーの組成分析 | 固体NMR CHN/燃焼IC |
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組成分析、Li定量 | ICP-AES | |
負極 | 活物質/バインダー/導電助剤の分布 | 断面SEM |
活物質の同定 結晶性評価 結晶構造解析 |
TEM ラマン分光 X線回折 |
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組成分析、Li定量 | ICP-AES | |
Liの状態分析 金属Liの存在解析 |
固体Li-NMR | |
電解液、電解質 | 組成分析 | ICP-AES、ICP-MS GC、GC/MS |
セパレーター | 形態観察 | クライオCP-SEM |
組成分析 | FT-IR |
技術資料
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700MHz NMRによる超高速MAS法とMATPASS法を組み合わせた固体7Li測定により、Mn系LIB正極材のLi状態が
解析可能です。LIB正極材の充電・放電時のLi状態や、充放電サイクルに伴うLi状態の変化を調べることができます。 -
正極材として使用されるMn酸化物におけるMnの価数は電池性能に影響を与える。
X線光電子分光装置(XPS、ESCA)を用いてMnの状態解析を行った事例を紹介します。 -
リチウムイオン電池の負極材表面には、電池性能に影響する非常に薄い膜が形成される。
この膜は大気中で変質するため、大気非曝露下で、表面分析に特化したX線光電子分光装置(XPS、ESCA)で
化学状態解析を行った事例を紹介します。 -
リチウムイオン電池の電極には、活物質や導電助剤を結着するためのバインダーが含まれます。
正極合剤に含まれるバインダーを分析した事例を紹介します。 -
電池の充放電機構や劣化原因の解明には、リチウム等の組成分析、定量分析が有効です。
正極・負極・電解液それぞれに適した前処理を用いた組成分析の例を紹介します。 -
リチウムイオンの状態を把握することで、電池の充放電機構や劣化原因の解明に重要な情報が得られます。
固体NMRによりリチウムイオンの化学状態を解析した例を紹介します。 -
Liイオンの出入りのしやすさなど、結晶構造の相違や変化をTEMにより観察可能です。
コバルト・ニッケル・マンガン系正極材の構造解析例を紹介します。 -
ESCAはLIBの分析に適しています。
コバルト系正極シートの解析を行った事例を紹介します。 -
正極の活物質/バインダー/導電助剤の分布解析を断面SEMで実施した例を紹介します。
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正極材料の結晶構造及び電子密度をXRD(Rietveld法)と最大エントロピー(MEM)法を
組み合わせて解析した例を紹介します。