概要
MALDI-TOF/MS(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization – Time Of Flight Mass Spectrometer)は、タンパク質、ペプチドや合成高分子の絶対分子量測定や構造解析に用いられる装置です。本資料では弊社が所有するMALDI-TOF/MS装置及びそのアプリケーションについてご紹介します。
原理・手順
MALDI-TOF/MSの外観を図1に、原理の概略図を図2に示します。MALDI-TOF/MSは下記手順で測定を行います。
- ① 試料溶液とマトリックス溶液(マトリックスを図3に例示)を混合し、試料プレートの上に滴下、風乾
(マトリックスとの均一な微小結晶を作製) - ② 試料プレートを装置内へ設置、真空引き
- ③ レーザーを照射し、試料分子がイオン化
(大多数を占めるマトリックス分子がレーザーのエネルギーを吸収し励起、試料分子へ電荷を授受) - ④ 試料分子(イオン)を質量分離部へ導入し、質量分離
(積算し、マススペクトルを取得)
装置概要
- 装置 :MALDI-7090(島津製作所)
- 測定質量範囲 :1~500,000Da(カタログ値)
- レーザー :固体UVレーザー(355nm)
- レーザー照射速度 :2kHz
- MS/MS :高エネルギーCID(衝突誘起解離)
- イメージングMS測定 :可
アプリケーション
1)ポリスチレン(PS)の測定
PS(分子量4,000)のマススペクトルを図4に示します。イオン化助剤としてトリフルオロ酢酸銀を添加することにより、銀イオン付加した質量でイオンが検出されています。各イオンの間隔はm/z 104であり、PSの繰り返し単位であるC8H8の質量と一致します。得られた質量から、末端構造はブチル基と推測されました。
2)ウシ血清アルブミン(BSA)の測定
BSAのマススペクトルを図5に示します。BSAの分子量である66,000の位置にイオンが検出されました。1/2であるm/z 33,000、1/3であるm/z 22,000のイオンはそれぞれ2価イオン、3価イオンと推測されます。
適用分野
プラスチック・ゴム、その他有機製品、フラットパネルディスプレイ、医薬品・化粧品・農薬
キーワード
ポリスチレン、合成高分子、ウシ血清アルブミン、タンパク質