概要
X線回折法(XRD)は粉末や固体及び液体サンプルに適用可能な汎用性の高い非破壊分析手法であり、結晶相の同定や原子レベルの構造解析に用いることが出来ます。弊社では光源に9kW-60kV対応型の回転対陰極式X線源を備えた高輝度XRDを導入し、各種分析に対応しています。装置の基本構成とその能力を活かした測定事例の一部をご紹介致します。
装置概要
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装置名 |
Rigaku製 全自動多目的X線回折装置SmartLab (9kW-60kV対応型) |
X線源 |
9kW 回転対陰極 Cu、Mo、Crターゲット |
光学系 |
集中法(CB)、平行法(PB)、微小部(CBO-μ) |
検出器 |
1次元検出器(D/tex Ultra250)、 2次元検出器(HyPix-3000HE) |
アクセサリー |
高温XRDチャンバー(~1200℃)、 LIB(リチウムイオンバッテリー)用充放電セル、 キャピラリー測定ユニット |
本装置はX線源に回転対陰極を用いた高出力タイプであり、通常の封入管式に比べて約5~7倍高強度の特性X線が得られます。これにより、従来観測が困難であった、微量に含まれる結晶成分の分析、X線の減衰が大きすぎて測定できなかった、LIB二次電池の充放電in-situ測定を行う特殊測定アタッチメント(LIB用充放電セル)等の利用が可能となりました。
測定例
1)微量成分の分析
高輝度X線源のメリットを活かし、従来装置で困難な0.1wt%以下の結晶相を高感度に検出、同定できます。
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結晶質シリカの粉じんは発がん性物質として知られています。
アモルファスシリカ粉末に0.1wt%の結晶質シリカを混合した模擬試料を分析した結果、短時間のスクリーニング測定で結晶質シリカを検出しました。
2)アモルファス材料の構造解析
短波長のターゲット(Mo)を用いてX線全散乱測定が可能です。アモルファス由来の散漫な散乱を精密に測定・解析し、二体分布関数(PDF)を得ることで、アモルファス材料の局所構造解析が可能です。
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ガラスは結晶のような長周期構造を有しておらず不規則な構造ですが、その中に存在する部分構造を解析出来ます。
3)二次電池の充放電測定
LIB用充放電セルを使用し、電池を充放電しながらin-situ測定することで、電極材料の微細な構造変化を直接観測可能です。
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充放電に伴い、LMO(LiMn2O4)由来の回折線が可逆的にシフトする様子が見られ、格子が収縮と膨張を繰り返していることが分かります。
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