概要
プラスチック製品の設計をするためには、力学特性の把握は必要不可欠です。引張試験機は材料の変形しやすさ、壊れやすさを調べるための装置で、力学特性の代表例である引張強度や引張弾性率等の測定が可能です。弊社ではJIS規格等に則り測定を行っております。
装置
装置外観写真を【図1】、装置スペックを【表1】に示します。
装置 |
島津製作所製万能試験機 AG-2000B |
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試験項目 | 引張試験 |
温調範囲 | -65~250℃ |
ロードセル | 50N, 1kN, 5kN, 20kN |
対応規格 | ISO527, JIS K 7161, JIS K 7113 |
解析事例
分子構造が異なる2種類のポリエチレン(HDPE、LDPE)の引張試験を実施しました。【図2】に引張試験で得られた応力–ひずみ曲線(S-Sカーブ)を、【表2】に引張試験値を示します。
HDPEは分岐がほとんどない直鎖状の分子構造ですが、LDPEは分岐を多く有しています。これにより、結晶構造に差異が生じます。この構造的な差異が、両者の硬さ(弾性率)や引張強度に顕著な影響を与えます。
引張変形のごく初期段階では、ポリマーは弾性体として挙動し、応力とひずみは比例関係(フックの法則)に従います。しかし、ポリマーは粘弾性体であるため、比例関係が成り立つ領域はごく初期のひずみ領域に限られます。JIS K7164規格では、0.05%および0.25%の微小ひずみで弾性率を算出します。
変形初期では、ひずみの増加に伴い応力も増大しますが、ある程度ひずみが進行すると応力が増加しなくなります。これを降伏点と呼びます。降伏点を超えてさらに変形を加えると最終的に破断に至ります。
引張試験では、このように弾性率、降伏応力、破断等の物性値を得ることができます。これらの物性値はポリマーの構造と密接に関係しています。
試料 |
弾性率 [MPa] |
引張降伏応力 [MPa] |
引張破断応力 [MPa] |
引張破断ひずみ [%] |
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HDPE |
1500 |
31.2 |
39.7 |
820 |
LDPE |
260 |
9.4 |
15.0 |
400 |