概要
GPC(SEC)にFTIR検出器を用いることにより、特定の官能基に由来する赤外吸収ピークから、その官能基の濃度分布を求めることが可能となります。これを用いれば、異なるポリマーをブレンドした試料について、各々に関する情報を同時に得ることができます。
一般的なGPC測定でブレンドポリマー中の個々のポリマーの分子量を知りたい場合は、前処理により各々の成分を分離しておく必要がありますが、操作が煩雑となるだけでなく、性質の近いポリマーについては、完全な分離が困難となるため、正確な値を求めることができませんでした。ここでは、2種類のポリマーをブレンドした試料について、そのままGPC-FTIR測定するだけで各々の分子量を求める例を示しました。
内容のご紹介
ポリエチレンテレフタレート共重合体(PETG)は、クレジットカードやICカードなどに用いられているポリマー材料で、他のポリマーとのブレンドとしても用いられることがあります。今回は、ポリカーボネート(PC)とのブレンド試料について分析を行いました。
1.試料
PETG/PCブレンド (PETG : Mw=60,000, PC : Mw=56,000)
2.分析条件
カ ラ ム : TSKgel GMHXL (7.8mmφ×30cm) 2本 (東ソー製)
溶 離 液 : クロロホルム(関東化学製HPLC級)
カラム温度 : 40℃
流 速 : 1mL/min
試 料 濃 度 : 2mg/mL
注 入 量 : 300µL
3.結果
PETG/ PCブレンド試料のGPC-FTIRによる 3D-クロマトグラムを図1に示します。図1は、各ポリマーのC=O伸縮振動に起因する吸収ピークの溶出曲線を示していますが、PETG(=1722cm-1)、PC(=1769cm-1)と波数が異なるため、それぞれ溶出曲線を分けることが可能となります。これらの吸収ピークの溶出曲線から得られた分子量分布曲線を図2に示します。両者の分子量が良好に測定できていることがわかります。