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技術資料
No.T1209 | 2013.02.15 (2024.06.04改訂)

グラジエントポリマー溶出クロマトグラフィー(GPEC)によるエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)の分離

概要

 HPLC(高速液体クロマトグラフィー)は、順相モード、逆相モード、サイズ排除モードなど、いくつかの原理に基づいた分離が行われています。ここでは、代表的なポリマーの組成分離法である、グラジエントポリマー溶出クロマトグラフィー(Gradient Polymer Elution Chromatography, GPEC)を用いた、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)の分離についてご紹介します。

分析条件

カ ラ ム : TSKgel ODS-80Ts (4.6mmφ×25cm) (東ソー製)
移 動 相 : アセトニトリル/クロロホルム移動相による溶媒グラジエント
検 出 器 : 蒸発型光散乱検出器(ELSD)
カラム温度 : 40℃
流   速 : 0.8mL/min.
試 料 濃 度  : 1mg/mL
注 入 量 : 10μL

試料

組成の異なる市販のエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)
酢酸ビニル含有量:7~57mol% 7試料
 EVA-7, EVA-11, EVA-14, EVA-18, EVA-21, EVA-25, EVA-57;数字は酢酸ビニル含有量(mol%)
ポリ酢酸ビニル 1試料
 PVAc

結果

 得られたクロマトグラムを図1に示します。今回用いた測定条件では、まずポリ酢酸ビニル(PVAc)が溶出し、ついで酢酸ビニル含有量の高いEVAから順に溶出しました。
 これらの試料について、ピークトップ保持時間と酢酸ビニル含有量(mol%換算)との関係を図2に示します。EVAについては、保持時間と酢酸ビニル含有量(mol%換算)とは良好な直線関係が得られ、本法により、共重合組成の異なるEVAを良好に分離できることが明らかとなりました。
 なお、今回用いた分離条件では、EVAが溶出した際の移動相中のクロロホルム/アセトニトリルの組成は、吸着臨界点(critical point of adsorption)組成と一致し、EVAの分子量には依存せずに溶出していることが明らかになっています1,2)
 また、図2PVAcが直線から外れている理由は、今回用いたアセトニトリルはPVAcの良溶媒であり、結果的にPVAcはサイズ排除モードで溶出してしまったためと考えられます。

【図1】GPECによる各EVAのクロマトグラム
(EVA試料の数字は酢酸ビニル含有量(mol%)を示します)

【図1】GPECによる各EVAのクロマトグラム
EVA試料の数字は酢酸ビニル含有量(mol%)を示します)

【図2】各EVAのピークトップ保持時間と酢酸ビニル含有量(mol%)との関係
(●:EVA, ■:PVAc)

【図2】各EVAのピークトップ保持時間と酢酸ビニル含有量(mol%)との関係
EVAPVAc

まとめ

 GPECを用いることにより、EVAの組成分離ができることが確認されました。

 

参考文献

1)香川, 岡﨑, 伊藤, 分析化学, 59 (9), 793 (2010)
2)香川, 分析化学, 71 (9), 449 (2022)

適用分野
高分子材料
キーワード
エチレン-酢酸ビニル共重合体,EVA,組成分離,吸着臨界点,HPLC,GPEC,溶媒グラジエント,液体クロマトグラフィー

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