1.概要
GPC(もしくはSEC;サイズ排除クロマトグラフィー)にFT-IR 検出器を併用することで、共重合体の組成分布解析が可能になります。ここでは、溶媒蒸発型のGPC-FTIR を用いて、スチレン-メタクリル酸メチル(St-MMA)共重合体の組成分布解析を行った例を紹介します。
2.GPC-FTIR 装置
溶媒蒸発型GPC-FTIR 装置は、カラムから溶出した溶液をネブライザーから噴霧して溶離液を除去し、残った試料を回転するゲルマニウム(Ge)板に連続的に吹き付けていきます。次に、このGe 板をFT-IR の試料室の専用ユニットにセットし、Ge 板を回転させながら、固着した溶出成分のIR 測定を連続的に行います。これにより、溶出成分の組成を連続的に分析することが可能となります。
3.分析例のご紹介
【測定条件】
カ ラ ム : TSKgel GMHHR-H (7.8mm×30cm) 2 本 (東ソー製)
溶 離 液 : THF
カラム温度 : 40℃
流 速 : 1mL/min
試 料 濃 度 : 2mg/mL
注 入 量 : 100μL
【試料】
スチレン-メタクリル酸メチル(St-MMA)共重合体 (Polymer Source Inc.製)
(1) ランダム共重合体,スチレン含有量=12mol%
(2) ブロック共重合体,スチレン含有量=27mol%
【結果】
P(St-MMA)ランダム共重合体(試料(1))の組成分布分析結果を図1 に示します。ここでは、RI 検出器(示差屈折率計)を用いて得られた微分分子量分布曲線と、FT-IR によって得られた吸光度比(A3084/A2924)の重ね書きを示しました。吸光度比の縦軸(A3084/A2924)は、スチレン中ベンゼン環の伸縮振動に起因する3084cm-1の吸収と、主鎖のメチレン基の伸縮振動に起因する2924cm-1の吸光度比を示しており、値が大きいほど、スチレン含有量が多くなることを示しています。今回の試料では、高分子量ほどスチレン量が増加することが確認できました。
P(St-MMA)ブロック共重合体(試料(2))の組成分布分析結果を図2に示します。このブロック共重合体では、低分子量側でスチレン含有量が高く、高分子量側では、ほぼ一定の組成であることが確認できました。
4.まとめ
溶媒蒸発型のGPC-FTIRを用いることで、各種共重合体の組成分布分析を行うことができ、ポリマーの重合制御や特性解析などに、非常に有用な情報をご提供することが可能となります。