概要
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)はGC、IC、GPC(SEC)等、数あるクロマトグラフィーの中でも代表的な分離分析手法であり、GCでは分析が困難な高沸点化合物や熱分解性化合物等を分析可能であることから一般に広く用いられています。HPLCの分離モードについては技術資料T2215をご参照ください。
技術資料T2218(HPLCで用いられる検出器 その1)では、HPLCでよく使用される検出器のうち紫外・可視吸光光度検出器、多波長検出器、示差屈折率検出器について記載しました。本資料では、更にその他の検出器についてご紹介します。
検出の原理と測定例
HPLCは、デガッサー、送液ポンプ、オートサンプラー、カラムオーブン、検出器等の機器から構成されます(図1)。検出器は文字通り分離された成分をピークとして検出する部分であり、最も重要な機器の一つです。HPLC検出器には表1に挙げたような検出器が市販されており、測定化合物や目的に応じて使い分ける必要があります。本技術資料ではその一部について原理・測定例を示します。
【表1】 主なHPLC検出器一覧
1.蛍光検出器(FL検出器)
ある種の化合物は、光により励起状態へ遷移した後、基底状態に戻る際に光を発します(蛍光)。蛍光検出器では、フローセル内を通過する測定成分に任意の励起波長(Ex)に設定した光を照射し、発生した蛍光を任意の波長(Em)で検出します。励起波長及び蛍光波長は化合物により異なりますので、選択性の高いピーク検出が可能となります。糖鎖のように化合物自体が発蛍光性を持たなくても、蛍光標識で誘導体化することで蛍光検出を可能とすることもできます(図2)。
2.荷電化粒子検出器(CAD)
RI検出器等の、UV吸収や蛍光の有無に関わらず感度を有する汎用検出器の中にも荷電化粒子検出器(CAD)のような高感度検出器があります。CADはCharged Aerosol Detectorの略で、測定成分を含む溶離液がスプレーされ気化し、生成した測定成分の粒子に電荷をチャージさせ、その電流値を測定することでピークとして検出します。気化工程があるので揮発性成分は検出できませんが、不揮発性であればあらゆる成分を検出できるのが特長です(図3)。
3.質量分析計(MS)
LC-MSにおける質量分析計(MS)もHPLC検出器の一種と言えます。MSでは測定成分をイオン化→質量ごとに分離することで溶出時間毎のマススペクトルが得られ、ピークを構成する成分の質量電荷比(m/z)を知ることができます(図4、5)。また、解析ソフトから任意の質量電荷比の検出強度でクロマトグラムを描写することも可能であり(抽出イオンクロマトグラム)、溶出位置の確認や定量に使用します(図6)。
【図5】 ピークA及びBのマススペクトル (MS)
まとめ
今回、HPLCの検出器として3種の検出器(蛍光検出器、荷電化粒子検出器、質量分析計)をご紹介しました。測定対象化合物の性質(発蛍光性か、UV吸収があるかどうか)や質量が知りたい等の目的に応じて最適な検出器を選択することが重要です。