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技術資料
No.T2416 | 2024.08.06

TD-NMRによるポリオレフィンの結晶比率の温度依存性in-situ解析

概要

 TD-NMR(Time Domain NMR、パルスNMR)は材料の分子運動性を観測することが可能で、ポリマーの高次構造の違いを評価することができます。さらに温度制御機構を有していることから温度による高次構造の変化を追跡 (in-situ解析) することもできます。本技術資料ではポリオレフィンの結晶比率の温度依存性を評価した結果を紹介します。

分析試料・分析方法

試 料

市販高密度ポリエチレン (HDPE)

装 置

ブルカージャパン製Minispec mq20

パルスプログラム

ソリッドエコー

測定温度

23℃~140

評価結果

【図1】HDPEのTD-NMRの測定結果

【図1】HDPEのTD-NMRの測定結果

【図2】結晶相、非晶相、中間相の模式図

【図2】結晶相、非晶相、中間相の模式図

 図123 (室温) におけるHDPETD-NMR測定結果を示します。波形分離解析を行った結果、緩和時間の異なる3つの成分が確認されました。PEを対象とするソリッドエコー法で観測されるNMR信号について、これら3成分は、それぞれ以下に由来すると言われています (2)

(a) 運動性が低い成分

結晶相 規則正しく配列した結晶ラメラ相

(b) 運動性が高い成分

非晶相 ランダム配向相

(c) 運動性が中間の成分

中間相 結晶相と非晶相の境界領域

 ここで、(a) 運動性が低い成分の分率 (割合) は結晶化度に対応すると言われています。

【図3】結晶相成分分率 (結晶化度) の温度依存性

【図3】結晶相成分分率 (結晶化度) の温度依存性

【表1】各温度の結晶相成分分率 (結晶化度)

【表1】各温度の結晶相成分分率 (結晶化度)

 図3と表1HDPEの結晶相成分分率 (結晶化度) の温度による変化を示します。結晶相成分分率は
100
℃までは穏やかに減少しますが、100℃を超えると急激に低下し、試料融点(132℃)を超える140℃では0% (結晶相成分の信号が観測されなくなる) となりました。

 このようにTD-NMRの温度制御機構を用いることで市販HDPEの結晶比率の温度依存性を明らかにすることができました。また、この温度制御機構を用いて接着剤などの熱硬化樹脂の硬化反応のin-situ解析も可能です。

適用分野
プラスチック、接着剤、熱硬化樹脂
キーワード
パルスNMR、分子運動性、緩和時間、高次構造解析、in-situ解析

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